トヨタの「メガウェブ」との方向性の違い
メルセデス・ベンツが素晴らしい歴史を持っていることはよくわかった。だが全体的なイメージとして「自慢話に終始」という感じも否めないし、またすべてが「展示」であり、インタラクティブな「体験」ができる要素がないのもちょっと不思議だった。
それで思い出したのがかつて東京のお台場(正確には東京都江東区青海)にあったトヨタの「メガウェブ」である。公式サイトでも「見て乗って感じるモビリティの体験型テーマパーク」と位置付けていたように博物館を超える存在で、私にとって一時帰国するたびに訪れるようなお気に入りの場所だった。
そこでは「レーシングシミュレーションゲーム」を設置していたり、巨大スクリーンの絵に合わせて座席が上下左右に動く「劇場型ライド」もあったりした。はたまたタイムを計測できる「カートコース」があった時期もあった。
メガウェブのレーシングシミュレーションゲーム(2018年3月29日撮影)
「ウィングレット(セグウェイのようなバランスをとって動かす一人用車両)」で館内を走るばかりか、館外に出るツアーまで実施されていて、非常に優れた「エンタメ空間」だった。
館内だけでなく外に出るツアーもあった「ウィングレット」。(2017年12月30日撮影)
さらに驚かされたのが自社以外の車も展示していたこと。
「メガウェブ」で昭和の街並みの中で展示されていたフィアット500。その後ろにはアルファロメオスパイダーの姿も。(2017年12月30日撮影)
左のトヨタクラウンに並んで、右にはダットサン1000トラック。(2017年12月30日撮影)
トヨタだけでなく自動車業界全体の歴史を伝え、発展を考える。そこにドイツのフォルクスワーゲンと販売台数世界一を競い合っている「自動車業界の雄」としての「懐の深さ」のようなものを感じた。
それが「高級自動車業界の雄」が運営する「メルセデス・ベンツ博物館」では見られなかったのがある意味で不思議でもあった。
推測ではあるが「メガウェブ」であれば「自動車の歴史」を語る場合、フランス人ニコラ・ジョセフ・キュニョーが1769年に発明した「蒸気で走る自動車」から始める。さらに1873年にはイギリスで「電気自動車」がガソリン自動車よりも前に実用化されていたことも驚きの歴史として伝えるだろう。
だが「メルセデス・ベンツ博物館」は「ガソリン自動車」から歴史を始め、その前は「馬車」の時代のように伝えていた。