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金利が高い国の債券に投資する時に想定されるリスクとは?

2024.07.14

金融経済アルキ帖「高金利投資とは何か」

経済的な観点で言うと、ヨーロッパの国々が覇権を握れたのは、国民から多くの信頼を得ることで低金利で資金を調達することが可能だったからです。

では高金利の国の実態やリスクはどうなっているのでしょうか?

そこで今回の金融経済アルキ帖は「高金利国投資の注意点」と「高金利の債券」に注目して詳しく解説していきます。

高金利になる仕組み

高金利になる仕組みは実にシンプルです。

例えば、あなたが保有するお金を銀行に預けているのも、その銀行が倒産しないという信用があり、必要なときにいつでも利用できると考えられるからです。仮に銀行に信用がない場合は心配になり、預金を下そうと考える人が殺到し、銀行はすぐに倒産してしまうでしょう。

これが「リスクプレミアム」と呼ばれるものです。

言い換えれば、信用が低い債券の場合、不況がやってきたときに不渡りになる可能性が高くなります。この場合、債券を売るには高金利を提示しなくてはなりません。

これが高金利になる理由です。信用が低くなれば企業も国も高金利になるのです。

また金利が高い国は不確実性が高まるので、資本市場も未発達でリスクがあるものと考えられるでしょう。

次に高金利国の事例について、解説していきます。

高金利の国の事例

【朝鮮王朝のケース】

朝鮮王朝時代の慶尚道慶州(キョンサンドキョンジュ)では、名家がお金を貸すときの利率が高かったことで有名です。実際、17世紀末から1910年まで利率が50%以下になることはなく、その後も30~40%程度の利率が長く続きました。

この理由は決して朝鮮の人々がお金を返さないからではなく、近代の社会構造が現代のように整っていなかったことが主な要因です。例えば、債務を返せずに逃げた場合に制裁する手段がなかったのです。

この点において、破産するリスクを考えて高金利にしなければならない要因があったのです。

【アルゼンチンのケース】

アルゼンチンは、過去数十年にわたり高金利政策を頻繁に採用してきた国の一つです。

1990年代にはインフレーションを抑制し、通貨ペソを安定させるために高金利政策を導入しました。しかし、この政策は長期的には経済成長を阻害し、1998年から2002年にかけて深刻な経済危機を引き起こしました。高金利による借入コストの上昇が企業の負担となり、失業率の増加や経済活動の停滞を招く事態となったのです。

【トルコのケース】

トルコは高金利政策を通じて経済の安定を図ろうとした国の一つです。特に2018年の通貨危機時には、急激なインフレーションと通貨リラの下落に対処するために高金利政策を採用しました。しかし、高金利は国内企業の借入コストを急上昇させ、経済成長の鈍化や失業率の上昇を引き起こしました。また高金利政策が長期間続くことで、海外からの短期資本の流入が増加し、その結果として資本の急激な流出リスクも高まりました。

【ジンバブエのケース】

ジンバブエは、2000年代に極端なハイパーインフレと政治的不安定性により、投資家にとって非常にリスクの高い国となりました。政府の経済政策の失敗が続き、100兆ジンバブエドルが発行されるなど通貨の信頼性が失われたことで、国債の金利は非常に高くなりましたが、投資リスクがあまりにも大きく、多くの投資家は撤退を余儀なくされました。

【ブラジルのケース】

ブラジルは一時期、高金利政策をうまく活用し、インフレを抑制しながら経済成長を実現しました。2000年代初頭には、金利引き下げと共に経済改革を進め、投資環境を改善しました。これにより、ブラジル経済は成長し、外国からの投資も増加しました。

つまり信用が低い社債や新興国が発行する国債の金利が高いのは、必ず理由があるのです。

またブラジルのように高金利政策を上手に活用した事例もあります。

もちろん、好景気の時にあえて高金利の債券を購入する投資家もいる一方、不況になると真っ先に売却の対象にもなるのです。

債券とは

債券は、企業や政府、地方自治体などが資金を調達するために発行する証券の一種です。発行体は投資家から資金を借りて見返りに定期的な利息を支払い、満期時に元本を返済する義務を負います。債券は借り手にとっては借入手段であり、投資家にとっては投資対象となります。

高金利債券投資のメリット

【高金利とリスク分散】

高金利債券は、他の債券に比べて高い利回りを提供します。これは投資家にとって大きな魅力です。高金利債券をポートフォリオに組み込むことで、地域的およびセクター的な多様化が図れます。これは全体のリスクを分散する効果があります。

【インフレに対する保護】

高金利債券はインフレが高い環境下でも名目金利が高いため、一定の保護効果があります。インフレ率が高くても、利回りがそれを上回る場合、実質的なリターンが確保されます。

高金利債券投資のデメリット

【信用リスクの増大】

高金利債券は、デフォルトリスクが高いため、信用リスクが増大します。これにより、元本の損失リスクが高まります。

【為替リスク】

高金利国の債券は、通貨の価値が不安定な場合が多く、為替変動による損失リスクがあります。通貨が急落すると、実質的な投資リターンが減少します。

【流動性リスク】

高金利債券市場は流動性が低い場合が多く、売買が難しくなることがあります。これにより、必要なときに資産を現金化することが困難になるリスクがあります。

【政治リスク】

高金利国はしばしば政治的不安定性を抱えており、政策変更や政権交代が市場に大きな影響を与える可能性があります。これは投資リスクを増大させます。

高金利債券投資の戦略

高金利債券への投資では、リスクを適切に管理しながらリターンを最大化する戦略が重要です。

【分散投資】

高金利債券への投資では、地域的およびセクター的な分散投資が重要です。これにより、特定の国や企業のリスクに依存しないポートフォリオを意識することが定石です。

【為替ヘッジ】

為替リスクを軽減するために、為替ヘッジを活用することが推奨されます。これにより、通貨価値の急落による損失を防ぐことができます。

【経済状況のモニタリング】

投資先の経済状況や政治動向を常にモニタリングし、リスクの兆候を早期に察知することが重要です。定期的なリスク評価とポートフォリオの見直しを行います。

【流動性の確保】

流動性の高い資産を保有することで、急な資金需要に対応できるようにします。短期的な資金ニーズに備えた現金や流動性の高い債券を組み込むことが有効です。

おわりに

高金利国への投資は、高いリターンを提供する一方で、重大なリスクも伴います。特に信用リスク、為替リスク、流動性リスク、政治リスクを意識しながら、多様化やヘッジ戦略を活用してリスクを最小限に抑えることが重要です。

リスクとリターンのバランスを見極めながら戦略的な投資を行うと言う意味において、投資上級者向けの選択肢となるでしょう。

今回は「高金利投資の注意点」と「高金利の債券」について解説させていただきました。

文/鈴木林太郎

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