熱帯夜の睡眠時、約8割の人がエアコンを使用 「つけっぱなし運転派」と「切タイマー運転派」が主流でほぼ同数
「熱中症対策においてエアコンの適切な使用は大切」と三宅氏は話す。まず、全体のうちで熱帯夜の睡眠時にエアコンを使っている人の割合を調査したところ、約8割(81.6%)という結果となった。積極的に熱中症対策に取り組む人が少ない一方で、熱帯夜の暑さへの悩みを持つ人が多い実態を踏まえると、熱中症対策への意識の有無に関わらず多くの人がエアコンを使用しているようだ。
続いて、熱帯夜にエアコンを使っている人の使い方について調査した。「朝までつけっぱなし」(46.1%)と「タイマー設定をして、寝ている途中で切れるようにしている」(43.5%)が、どちらも4割を超え、ほぼ同数という結果となった。今回の調査では、「つけっぱなし運転派」と「切タイマー運転派」には節電意識や睡眠時の困りごとに対する大きな差は無く、習慣の違いと言えそうだ。
熱帯夜の睡眠時、「暑さ指数(WBGT)」の上昇に要注意 よく熱中症対策に取り組んでいる人はエアコンを「つけっぱなし」の傾向
熱中症対策への意識の違いによるエアコンの使い方についても調査した。その結果、熱中症対策に取り組んでいる人ほど熱帯夜にエアコンを使用する傾向があることがわかった。また、「よくしている」と回答した熱中症対策に積極的に取り組んでいる人は、朝まで「つけっぱなし」にしている割合が高い結果にもなった。
夏の睡眠時、エアコンをつけていないと室内の温度や湿度が徐々に上昇し、熱中症への警戒が必要な環境になることがある。こうした熱中症のリスクの評価には「暑さ指数(WBGT)」※1と呼ばれる指標が用いられる。
エアコンを朝まで「つけっぱなし」にしておくと、一般的に熱中症の危険性が少ないといわれる程度のWBGTに抑えることも可能だ。気温や湿度が高い日は、エアコンをタイマーで切るよりも朝まで「つけっぱなし」にした人が、快適な睡眠にもつながると考えられる。
※1:熱中症のリスクを評価する指標のこと。熱中症のリスクを増大する要因である気温、湿度、日射・輻射を取り入れてもとに算出される(単位は℃)。
熱帯夜でも「睡眠の質」を意識して過ごすことは、翌日の熱中症リスク低下につながる可能性が
三宅 康史(みやけ・やすふみ) 氏
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・帝京大学医学部救急医学講座教授。1985年東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会専門医・指導医・評議員、日本集中治療医学会専門医・評議員など。
■熱帯夜の睡眠時や起床時に体の不調を感じたら、「軽い熱中症の可能性」も疑って
熱帯夜、体調に違和感なく入眠したにもかかわらず、朝起きた時に倦怠感などの体の不調を感じた場合は「軽い熱中症の可能性」も疑った方が良いでしょう。寝室が暑かったり、就寝時に十分に水分補給ができていなかったりすると、体の脱水が夜中に進んでしまい、熱中症になってしまうリスクがあります。特に熱帯夜は扇風機をつけたり、窓を開けたりするだけでは十分に涼しい環境を作り出せない可能性があります。エアコンを使用するなどして寝室環境を快適にし、寝る前にしっかりと水分補給を行うことが重要です。
■「睡眠の質」を意識することで、翌日の熱中症リスクを抑えられる可能性あり
熱中症を予防するためには、睡眠をしっかりとって体を回復させることが重要です。熱帯夜の暑さで目が覚めてしまったり、寝付けなくなったりすると、「睡眠の質」が低下して体を十分に回復させられなくなってしまうこともあります。翌日に疲労と熱中症リスクを持ち越さないためにも、過ごしやすい睡眠環境づくりを意識して、質の良い睡眠がとれるように心がけましょう。
■蒸し暑い熱帯夜には、室内の温度だけでなく「湿度」にも注意して
熱中症リスクを考えるうえで見落とされがちなのが「湿度」です。人間は、汗が蒸発する際の気化熱を利用して体温を調節しますが、室内の湿度が高いと汗が蒸発しにくくなります。汗が蒸発しづらくなると体の熱をうまく逃がせなくなり、体の中に熱がこもりやすくなってしまいます。蒸し暑い夜にはエアコンで冷房や除湿をするなど、温度や湿度管理にも注意をしてみてください。
熱帯夜にも役立つ上手なエアコンの使い方のヒント
1. 快適な空間づくりには温度だけでなく湿度も重要
快適な空間づくりには「温度」だけでなく「湿度」を調節することも大切です。湿度が20%変われば体感温度は約4℃変わるといわれています。ダイキンが試験室で行ったサーモグラフィによる可視化検証試験※2では、温度28℃、湿度85%の環境で皮膚温度の上昇を確認した後、温度は変えずに湿度を60%にすると、被験者12名のうち10名の手部や顔部の皮膚温度が顕著に低下する結果となりました。
熱中症リスクの評価には「暑さ指数(WBGT)」と呼ばれる指標が用いられます。室内の温度や湿度が上昇すると、熱中症への警戒が必要なWBGTに達する場合があります。室温が高く湿度も気になる場合には、エアコンを使って温度や湿度をコントロールすることが大切です。
2. 夏場の睡眠時のエアコン使用は、朝まで「つけっぱなし運転」がおすすめ
睡眠時にエアコンをつけっぱなしにすることへの抵抗感から切タイマーを使う人は多いかもしれません。そこでダイキンは、神奈川県横浜市にある一般の住宅において、朝までエアコンをつけっぱなしにする「つけっぱなし運転」と切タイマーを使って就寝3時間後にエアコンを切る「切タイマー運転」それぞれで室内のWBGTの変化を計測しました。「つけっぱなし運転」ではWBGTに大きな上昇は見られなかったのに対して、「切タイマー運転」の場合はエアコン停止後にWBGTが徐々に高まる結果となりました。
就寝中にエアコンがオフになると、明け方にはWBGTが熱中症への警戒が必要とされる値まで達する可能性があります。気温や湿度の高い日は適度な温度設定で、朝まで「つけっぱなし」にした方が快適な睡眠につながるといえそうです。
※4:気象庁「過去の気象データ検索」より算出
<調査概要>
調査名 :熱帯夜の睡眠時の熱中症対策とエアコン使用に関する意識調査
調査期間:2024年6月6日(木)~6月8日(土)
調査対象:全国の 20代~60代の男女530名
調査方法:スマートフォンリサーチ
出典:ダイキン工業株式会社
構成/こじへい