屋外と比較して、屋内での発汗には塩分摂取意識が行き届かない人が多数
今回、屋外と屋内において水分や塩分補給の意識差が生まれるかについても調査を行なった。
『仕事や部活動など屋内と屋外、どちらで身体を動かすことが多いですか?』と質問をした上で、「屋内」と回答した704人、「屋外」と回答した296人それぞれに、『汗をかいたとき、水分や塩分の摂取は出来ていますか?』と聞いた。
屋内の人たちは「水分は摂れている(=塩分は摂れていない)」の割合が多く、約67%が水だけを補給している状況だった。屋外の人たちと比較してみても、屋外で「塩分は摂れている」と回答した人が約10%いたのに対し、屋内では約4%。また「水分も塩分も摂れている」という回答も、屋外が約28%、屋内が約23%と、いずれも下回る結果になっており、屋内で身体を動かすことが多い人たちの方が塩分摂取意識が低下することがわかった。
この傾向から見ると、発汗するほど身体を動かした際には、屋外よりも屋内の方が潜在的なリスクが高いと言えそうだ。
なお、屋内で身体を動かすことが多い人たちにおいて『「水分は摂れている」と回答した方にお伺いします。塩分を摂らない理由はなぜですか?(複数回答)』と質問したところ「エアコンで熱中症対策できているから」が約36%、「塩分は食事から補給できているから」が約34%、「塩分の適切な摂取量が分からないから」が約21%と上位回答となっており、屋内ならではともいえるエアコンへの過信や、そもそも食事以外でどのくらいの塩分を摂ったらよいかわかっていないという悩みが読み取れる。
同様に、『「水分も塩分も摂れていない」と回答した方にお伺いします。それはなぜですか?(複数回答)』においては、「喉が乾いている感覚がないから」が約35%と高く、「エアコンで熱中症対策できているから」が約26%、「いつでも水分補給できる場所があるという安心感があるから」が約21%と水分補給に関する回答が続いた。
また「塩分の適切な摂取量が分からないから」も約16%と比較的目立っており、塩分の適切な補給量が分からないというのは共通の悩みと言えそうだ。
■約 56%の人が「熱中症警戒アラート下で守るべき、運動のガイドラインを知らない」
暑さ指数(WBGT)は、熱中症を予防することを目的として制定された指標で、労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、ISO等で国際的に規格化されている。
この暑さ指数が33に達するときに、注意喚起のため発表されるのが熱中症警戒アラートだ。こうした仕組みへの理解度を調べるための聴取を行なった。
『2023年は、熱中症患者発生数が急増するWBGT暑さ指数33以上で発令される熱中症警戒アラートが1,232回も出ましたが、熱中症警戒アラート表中の熱中症予防運動指針を知っていましたか?』という質問に対して、「知らなかった」と回答した人が約56%。
さらに、『WBGT暑さ指数28以上の運動時には、「10~20分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行う。」という指針が出ているが、この「塩分の補給」について知っていましたか?』という質問に対しては、約62%もの人が「知らなかった」と回答した。
実際に熱中症警戒アラートが出たときにどうしたら良いのか、知識が追い付いていない現状が示された。
また、『WBGT 暑さ指数 28 以上の運動時は、「10~20 分おきに休憩をとり水分・塩分の補給を行なう」という指針が出ているが、この頻度で「塩分の補給」を適切に行なえていたと思いますか?』という質問には、「問題があり、適切に対応できていなかった」および「全く対応できていなかった」と回答した人が約 31%おり、3 人に 1 人は適切な塩分摂取行動ができていなかったこともわかっている。
調査結果について〜三宅康史先生コメント
夏本番、座っているだけでも汗をかく日がつづきますね。
そんな時、水分をとることだけに注意していませんか?意外と見落とされがちなのが「塩分補給」です。暑い夏では、たくさん水分を取って、たくさん汗をかきます。飲む水と出す汗の違いは、塩分が含まれているかどうかです。
たくさん汗をかいても、それを水だけで補っていると、当然体内の塩分が減ってきてしまいます。
体内に正常な水分を蓄えておくためには、塩分が必要不可欠です。塩分に含まれるナトリウムには、体内の水分をキープする重要な役割があります。
そのため、汗などで体から大量の水分が失われ、ナトリウムが不足した一時的「塩分ロス」の状態だと、水分補給だけでは体内に水分を保持することが出来ません。体内の水分量を正常に保つためには、水分と共に「適切な塩分補給」を行い、一時的な「塩分ロス」を避けることが重要になります。
『急に大量の汗をかき、体内の水分と塩分が枯渇している状況で、水分だけを摂取していると、最終的には、ますます脱水症状が進行してしまうことを知っていますか?』という質問において、約 44%は「知らない」と回答しており、こうした理解不足が「塩分よりも、水分だけを補給」という意識の偏りを生んでしまっていることが考えられます。
汗をかき(500ml程度)、また食事を抜いた時は 500mlのペットボトル1本の水に加えて、塩を1つまみ(0.5~1g前後)を一緒にとるとよいでしょう。
ただし高血圧や心臓病、腎臓病のある方は、塩分の補給についてはあまり意識せず、バランスの良い 3 度の食事をしっかりとること、涼しい環境での生活を意識していただくことが大切です。
ますます、暑くなっている昨今、熱中症予防対策や夏の体調管理には、一時的な「塩分ロス」を防ぐためにも、水分に加えて、塩分摂取にも気を使いましょう。食事での摂取が基本ですが、手軽に補充できるように携帯しておくこともポイントですね。
三宅 康史(みやけ やすふみ)先生
帝京大学医学部教授
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長
日本救急医学会評議員・専門医・指導医
熱中症に関する委員会委員
調査概要
調査対象/全国の20代~60代の男女
調査方法/WEBアンケート調査
サンプル数/1000人
調査期間/2024年6月17日~19日
調査機関/楽天インサイト
関連情報
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構成/清水眞希