夜勤とギャンブル利用の関係
日本人の労働者2万人以上を対象とした横断研究の結果、夜勤はギャンブルの利用と関連しており、夜勤のある人ほど、ギャンブルから生活や健康などの問題が発生する可能性が高いことが明らかとなった。
慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室 HTA公的分析研究室の吉岡貴史氏らによる研究であり、「Addictive Behaviors」に5月23日掲載された。
夜勤を含むシフト勤務者の睡眠に関する問題は、「交代勤務睡眠障害」と呼ばれる。
睡眠の質が悪いとアルコールや睡眠補助薬の多用につながる可能性があり、反対に、覚醒を維持するためにカフェインやタバコなどの物質を常用してしまうこともある。夜勤は物質使用障害と関連することが報告されていることから、同じく行動嗜癖の一つであるギャンブル障害とも関連する可能性がある。
そこで著者らは、「JASTIS研究」の2023年2月のインターネット調査データを用いて、夜勤の有無とギャンブルの関連について調査した。
ギャンブルを利用している人には「PGSI」という自記式スクリーニングテストを用いて、仕事、経済状態、人間関係や心身の健康など、ギャンブルに関連した問題の有無・程度を評価し、27点中8点以上を「問題ギャンブリング」と定義した。
調査対象者2万1,134人(年齢範囲15~82歳、女性43.8%、夜勤者28.0%)のうち、ギャンブル利用者(1年以内にギャンブルを利用)は9,739人だった。
全対象者のうち、ギャンブル利用者の割合(2019年の国民生活基礎調査を用いた重み付け後割合)は、夜勤者が55.4%、非夜勤者が42.1%だった。
人口統計学的因子や喫煙・飲酒習慣、精神疾患や心理的苦痛などの影響を調整した多変量ロジスティック回帰モデルで解析した結果、夜勤者はギャンブル利用と有意に関連していた(非夜勤者と比較したオッズ比1.39、95%信頼区間1.25~1.53)。
また、ギャンブル利用者のうち、問題ギャンブリングに該当した人の割合は、夜勤者が24.2%、非夜勤者が8.8%だった。問題ギャンブリングと夜勤の関係について、同様に解析を行った結果、夜勤は問題ギャンブリングと有意に関連していることが明らかとなった(同1.94、1.57~2.40)。
さらに、夜勤者のうち、シフトのローテーションの有無で分けて分析したところ、ローテーションのある人(同1.46、1.28~1.68)、ない人(同1.32、1.16~1.50)のどちらも、ギャンブル利用と有意に関連していた。
一方で、問題ギャンブリングに関しては、ローテーションのある人(同2.84、2.23~3.63)でのみ有意な関連が認められ、ローテーションのない人(同1.07、0.79~1.45)では関連が認められなかった。
著者らは、今回の大規模調査により夜勤とギャンブル、問題ギャンブリングとの関連が示されたことの説明の一つとして、「交代勤務睡眠障害により、ギャンブル利用が促進されたり、ギャンブルがやめられなくなってしまう可能性がある」と述べている。また、今後、縦断的関連が検出できるように研究を継続していくとしている。(HealthDay News 2024年7月8日)
Abstract/Full Text
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0306460324001205?via%3Dihub
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構成/DIME編集部