ボューム系ラーメン店の一人客は遠くから来ている!?
会社の近くであればそれだけ同じ社員や知り合いに遭遇しやすいということもある。会社の近くで、特に社員証を首からぶら下げていればなおさらのこと〝帰属意識〟は払拭できそうもない。
もちろん健康的な食生活を送るためには常に帰属意識があったほうがよさそうなのだが、いい意味で仕事を忘れてリラックスしたい時もあるだろう。そういう時、束の間の〝小さな旅〟が意識されてくるのかもしれない。特に定期券のルート内で途中下車できる駅の繁華街などは格好の〝旅先〟となりそうだ。
そしてその〝旅先〟では健康的メニューはいったん棚に上げて、好きなものを食べ、飲んでいたとしても人情としては理解できる。
新たにオープンした居酒屋などでまだ〝常連〟が形成されていない時期は、居合わせた初対面のお客同士で話が弾むこともある。そうした機会に職場と住まいの最寄り駅がさり気なく話題になることもあるが、個人的な体験で知り得たのは会社員の方々はけっこう会社からも自宅からも離れた場所で飲んでいたりすることである。
特に一人で来ているお客にその傾向が強いように思う。そしてそこでは人目を気にせず、つまり〝帰属意識〟を脱ぎ捨てて食べたいものを食べ、飲みたいものを飲んでいるのだろう。
またボューム系ラーメン店や大盛りのカレーや丼が売りのお店では往々にして一人客が多いのだが、そうした理由からひょっとするとけっこう遠くから定期的に通っているお客が少なくないのかもしれない。
一人での外食は暴飲暴食のリスクが伴いそうだが、それを避けるにはやはり友人などと複数で食事をすることに尽きるようだ。
2019年に米・スタンフォード大学の研究チームが「Nature」で発表された研究でも、他者と一緒にいると脳が食事よりも社会的交流を優先するため、過食を防ぐことができることが示唆されている。
研究チームはマウスを使った実験で、摂食行動を担う脳回路が、社会的相互作用によって刺激される脳回路と相互作用することを発見し、この部分(眼窩前頭皮質)の脳細胞を刺激すると、マウスたちは高カロリーのおやつを食べることにあまり興味を示さなくなったことが突き止められた。
逆に言えば、社会的交流がない一人の状態では脳活動〝ブレーキ〟がかからず過食につながる可能性があることになる。
もちろんたまには〝不健康メニュー〟を楽しんでも罪はないともいえるのだが、〝孤食〟のリスク、さらに一人〝旅先〟で飲食するリスクについての事前の自覚が求められているといえそうだ。
※研究論文
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195666324001752
※参考記事
https://news.flinders.edu.au/blog/2024/05/24/ill-have-what-shes-having/
文/仲田しんじ