お昼時に会社の近くの飲食店や、あるいは自社の社員食堂に行くとするなら、当然だが同僚や上司や部下、知り合いの仕事関係者に出くわす可能性は高いだろう。同席するしないに関わらず、ひとまず食事をするわけだが、そうした〝内輪〟の環境は選ぶメニューに何らかの影響を及ぼすのだろうか――。
〝帰属意識〟が健康的フードメニューを選ばせている
一般の人々も利用できる社員食堂が折に触れて各種のメディアで特集されたり、某健康機器メーカーの社員食堂は映画化されるほど話題になったりもしたが、そもそも社員食堂の存在目的は社員の健康管理にあり、栄養バランスが整った食事が手軽に食べられることを目指している。
社員食堂では健康的メニューが提供され、実際に社員たちに選ばれているのだが、たまには社員食堂ではなく会社の近くの飲食店へと同僚などと一緒に足を運びたくなることがあるかもしれない。
そうした場合、普段の健康的メニューの反動から〝ジャンク〟でボリュームあるメニューを選んでも不思議ではないように思えるが、案外そうでもないことが最新の研究で報告されていて興味深い。そこで鍵を握るのが組織やグループへの〝帰属意識〟であるという。
豪・フリンダース大学の研究チームが今年5月に「Appetite」で発表した研究では、社会集団への〝帰属意識〟は我々の食品選択に大きな影響を与え、より健康的な選択肢へと導く可能性があることを報告している。つまり会社への帰属意識が高い社員は、会社の近くの飲食店でも健康的メニューを選ぶ傾向がありそうなのである。
18歳から32歳の179人の女子大学生が参加した実験でそれぞれの参加者は、自分の大学(イングループ)または他大学(アウトグループ)のフェイスブックページを閲覧した。
該当キャンパスのカフェにあるメニューの情報も提供されたのだが、そのメニューには健康的なメニューもあれば、不健康なメニューもあった。そしてこうしたメニューについての学生たちのコメントの情報も提示された。
次に参加者はその当該のカフェで、メイン料理、サイドメニュー、デザートを1品ずつ注文するよう求められて回答した。
こうして収集したデータを分析したところ、帰属意識の強い自分の大学のカフェでは健康的メニューを選ぶ有意な傾向が見られたのである。一方で自分に帰属意識のないカフェではこの傾向は見られなかった。
まさに某健康機器メーカーのように、健康的な食習慣を推進しているグループへの帰属が自分のアイデンティティの重要な部分であると感じる者はそのグループの〝標準〟と認識されている健康的メニューを選ぶ可能性が高くなるということのようである。
会社のお昼休みでも組織への帰属意識が保たれているであろうことから、会社の近くの飲食店でも健康的メニューを選びがちであっても不思議はないのかもしれない。