『ワケあり区、足立区。』誕生秘話
区外に向けたプロモーションが本格稼働するまで、3年間準備してきたシティプロモーション課。栗木課長曰く、ひたすら地道に足立区の売り方を模索したという。
「区外の方が足立区に対して何を思っているかを調査するためにSNSの投稿を4万件ほど分析したり、時には区外在住の方々やメディアの方々にインタビューを行い、『広報・メディア戦略』も作りました」
さらに、こんなことも。
「それまで足立区はマイナスイメージで目立つことはあるものの、逆に強く推し出せる魅力的なコンテンツがなかった。いわば、『足立区と言えば⚫︎⚫︎』と言えるものがなかったんです。そこで、足立区の売りとなる『⚫︎⚫︎』探しもしました」
「例えば渋谷ならスクランブル交差点などスポットがすぐ頭に浮かびますよね。でも、足立区といえば?と問われた時、ぱっと浮かぶものが見つからなかったんです」
「その代わり、足立区が取り組んでいる『おいしい給食』や『千住エリア』など、区外からも認知されているものが数多くあることがわかった。そんな、“キラキラ輝く小さな星のような魅力”をまとめて発信していこうと、公式サイトに特設ページを作って紹介しています」
そんな地道な活動の中で生まれたのが、先日、賛否両論を巻き起こし物議を醸したキャッチコピーだ。しかし、それが狙いでもあった。
「たしかにあのコピーは刺激的なので区民の皆様からも、『実にうまい。めっちゃ印象に残る』、『非常に良いPR』など応援メッセージもたくさんいただいた一方で、反対意見もいただきましたが、あくまで『多くの人に振り向いてもらうためのツール・言葉』なんです。賛否を巻き起こすというのも一つの戦略でした。交通広告などで打ち出すことで、まずは『足立区がなんかやり始めたぞ』と認識してもらうことが第一歩でした」
怒涛の進撃、果敢すぎる挑戦。足立区はこれまで手を出してこなかったSNS広告も今夏から始めようとしている。すべては、『今の足立区』を知ってもらうため。
犯罪減少&日本一の給食!足立区の知られざる魅力
これまで、散々すぎるほど「治安が悪い」と言われてきた足立区だが、実はこの20年で見ると、ピーク時に比べて約8割も刑法犯認知件数が減少しているという。
「以前から足立区が行ってきたのが、「ビューティフル・ウィンドウズ運動」です。これは、割れ窓理論(ブロークン・ウィンドウズ)と言って、割れた窓ガラスを放置すると街全体が荒廃して治安が悪くなり犯罪も増えるということに着目して治安改善したNYの成功事例を参考に足立区アレンジをしたものです」
「美しいまちをつくることで犯罪を抑止するという考えのもと、警察・区・区民の皆さんが一体となって、徹底的に街の防犯を強化し、放置自転車撤去や花を植える活動など、ありとあらゆる取り組みを行ってきました。それらが刑法犯認知件数の8割減に繋がっていると思います」
そして、足立区にはもう一つ「おいしい」魅力がある。
「実はちょうど今日(取材日の6月20日)から、セブン‐イレブンさんと共同開発した足立区オリジナルの人気給食メニュー『えびクリームライス』が再販売されるんです」
そう、これは2022年に区制90周年記念として初めてコラボ商品が開発・販売され話題になったのだが、今年もコラボが実現!学校給食メニューがコンビニ商品になるということも驚きだが、その味も凄かった。筆者も早速いただいてみたが、海老もたっぷりでホワイトソースの旨みが他では味わえない美味しさだった。
「えびクリームライス」は都内約1,200店舗のセブン‐イレブンで販売され、今年は新たに「小松菜のバター醤油スパゲティ」が足立区内138店舗で販売された(既に販売は終了)。
実は足立区、他の自治体では考えられないほど『学校給食』に力を入れている。
「2007年から“日本一おいしい給食”を目指して、『おいしい給食事業』を始めています。当時、東京都の生ごみで一番多いのが給食の残菜でした。区長の近藤が就任した際に給食の食べ残しがあまりにも多いことに驚き、取り組み始めたのがきっかけです」
「給食を『生きた教材』として生産者や調理に関わる人々への感謝の気持ちを抱いてもらうと共に、『無理やり食べさせるのではなく、美味しくすることでついつい食べてしまう給食を目指そう』ということで始まったんです。その結果、2022年度には残菜を約7割減らすことができました」
たしかな結果を残している「おいしい給食事業」。味へのこだわりも給食の域を超えている。
「足立区では小中学校に栄養士を配置し、各校それぞれで給食を作っているんです。しかも、化学調味料を一切使わず、その日に使う出汁も朝から取って調理しています」
子どもたちに給食に関するアンケートを行ったところ、小学生は97%、中学生は95%、給食が美味しいと回答。イベントなどで「足立区の自慢は?」と問うと、「給食が美味しい」と答える子どもたちが多いという。
幼い頃から正しい食生活を身につけることで、大人になっても正しい食事を選べる。『子どもの頃から絶対音感ならぬ絶対味覚を育てる』という近藤区長の想いがそこにはある。