かねてからマイナスイメージが付きまとい、とかく「治安が悪い」と言われ続けてきた東京都足立区が、あえてそのイメージを逆手に取ったプロモーションに打って出た。
掲げたキャッチコピーは、『ワケあり区、足立区。』。
このコピーは一躍話題となり賛否を呼んだ。一見、自虐的にも感じられ、何よりも街のPRに「ワケあり」というワードを使っている点がその大きな理由だろう。
だが!足立区は本気だった。
イメージと現実とのギャップを解消、マイナスイメージを逆手に取ったキャッチコピー
いわれなきイメージと現実とのギャップを解消し、地元のポジティブな「ワケ」を広く発信したい。その思いで立ち上がったのが足立区の政策経営部シティプロモーション課だ。
今回、キャッチコピー誕生のワケと活動内容について、足立区シティプロモーション課長・栗木希さんに話を聞いた。
――まずは、『シティプロモーション課』ってなんですか?
「そもそもは2010年、足立区のイメージアップを目的として立ち上げた専管組織で、東京23区としては初めてのシティプロモーション課になります。一般的にシティプロモーションというと、観光客誘致や移住定住促進など、外に向かって街をPRする取り組みがほとんどですが、我々は足立区民の皆さんの気持ちを変えるところから始まったんです」
「というのも当時、足立区民を対象にした世論調査で『自分の街の治安が悪い』と感じている方が多く、住む街に誇りを持てないという方が多かったんですよね。まずはそれを解決すべく、『職員一人ひとりがシティプロモーター』として様々な活動を行ってきました」
マイナスイメージの要因となっているボトルネック的課題(治安・学力・健康・貧困の連鎖)の解決に取組み、徐々に区民のマイナスイメージを払拭。
近年は、区民の約6割が治安が良いと思えるような街に変わってきたという。
今度は外に向けたPRを重点的に行うことになるのだが…
「ボトルネック的課題の解決と並行して、大学誘致などまちの新たな魅力創出も行っていたんですが、10年頑張っても区外の方が持つ足立区イメージはアップデートされないまま。相変わらず治安が悪い街という印象がつきまとっていたんです」
地元民は治安がいいことを実感している。しかし、足立区に住んでいない方で、足立区の「治安が良い」と思っているのはわずか7.4%。
しかもそれは未だに変わらない。
原因を調べてみると、メディアやSNSなどの情報だけで“なんとなく悪いイメージを抱いている”ことが判明。そこで足立区は新たな舵を切った。
「ならば、根強く残っているマイナスイメージを逆手に取ったキャッチコピーで足立区のイメージを変えていこうと思ったんです。ハッキリ言ってしまえば、メディアさんが植え付けた足立区のマイナスイメージを、メディアさんの力を借りて一新していこうと」
栗木課長を始め、シティプロモーション課が3年前に作り上げた第3次足立区シティプロモーション戦略方針が今まさに、世に放たれようとしている。その大きな一手が先日発表されたキャッチコピー「ワケあり区、足立区。」だった。
ネガティブなワケではなく、「足立区で子育てするワケ」、「起業するワケ」、「遊びに来ているワケ」など、足立区のポジティブな「ワケ」を広く発信するという試みだ。
足立区の「リアル」を知ってほしいという熱い思いが、こうして解き放たれたのである。
しかし、ここに辿り着くまでには多くの苦労があった。