広々としたスペースにベンチが並ぶだけ……そんな地方のターミナルを再活用する動きが各地で進んでいる。何とこの数年で鉄道、バス、フェリーと、様々な乗り物の待合室が、宿泊施設やシェアオフィスなどに生まれ変わりつつあるのだ。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは、再活用が進むこの流れを次のように分析する。
「鉄道会社をはじめとする交通各社は、コロナ禍で一時、観光客や出張で利用する人が大幅に減りました。待合室で長時間過ごす人が少なくなり、このスペースを活用してビジネスにつなげようと工夫した結果、様々な施設に生まれ変わったのでしょう。駅の空きスペースに人気店を出店させるエキナカビジネスと同じ考え方ですね」
リモートワークの普及で現在も通勤で利用する人は完全に戻っておらず、人員の削減を進めているところが多い。しかし、ターミナルに勤務するスタッフの削減や無人化を行なうと建物の老朽化が一気に進む。
「企業に入居してもらったり、観光客が立ち寄る施設に生まれ変わったりすれば、新たな人の流れが生まれます。ここに従来の公共交通機関の利用者がプラスされますから、周辺はこれまで以上に人が集まる場所となり、地域が活性化します」(鳥海さん)
さらに、新たに入った施設の管理者が手入れすることで建物の老朽化防止にもつながる。交通インフラの再活用は、古くなった建物、にぎわいが少なくなった地域を持続可能なものとするサステナブルな取り組みなのだ。
車内にベッドが!バス好き垂涎の施設
バス案内所→宿泊施設
「ばすてい」
[料]1泊1棟/3万4000円〜
2022年3月に閉鎖された静岡県賀茂郡西伊豆町の築74年の案内所を貸し切り型の宿に。定期券の販売窓口など、案内所の雰囲気が残る宿は乗り物好きの子供との宿泊におすすめ。建物の隣にはバスが停車しており、車内で宿泊することも可能だ。