トレッドミルを使い1日1万5000歩
──すでに大きな事業を2つ成功させています。「事業を成功に導く習慣」はありますか?
トライ&エラーを繰り返すことです。例えば私は2015年に、AIが自然文で法律に関する質問に回答するサービスを構想しています。しかし当時のAIはまだ性能が低く、回答に対し質問し、その回答にまた質問する、チャット形式での対話ができず実現しませんでした。しかし今、ChatGPTなど生成AIの大規模言語モデルの普及を受け、私は「いよいよ社会実装できる時が来た」と感じ、23年からAIによる法律相談チャットサービスの試験提供を開始しています。以前の挑戦があったから、業界でいち早くAIの導入に踏み込めたのです。
失敗を恐れるのでなく、むしろ最速でトライし、最速で失敗し、最速で次に行く、これを繰り返すことが重要だと思います。その中から成功が生まれるのです。
──非常にエネルギッシュですが、そのために何かしていることは?
メンタル面で言えば……「成功者の習慣」というタイトルに反するようですが(笑)、「成功した」と思わないことです。この感覚は次第に現状維持バイアスとなり、衰退の1歩目になります。だから私は常に「上」をベンチマークするようにしています。例えばイーロン・マスクさんは知名度も資金力もありますが、今も世界的な課題にソリューションを提供しようと走っています。そういった姿を見ていると「自分もやるんだ!」と渇望感が湧いてきますね。あと、体力面も重要です。私、毎日歩いています。目標は1万5000歩です。
──そんなに?
はい。トレッドミル(ウォーキングマシン)を使えばメールや「Slack」をチェックしたり、電子書籍を見たりしながら歩けます。今日も朝からやってきたので、(15時の時点で)もう7000歩ですよ。
「トイレは1日1回」!?むちゃなルールも経験に
思えば、高めのハードルを課す習慣があるのかもしれません。
──若い頃、司法試験を目指して1日200円での生活を課していたという伝説も聞いていますが。
当時は本当にお金がなかったんです(笑)。親に無理を言って司法試験に挑戦していましたし、アルバイトをするとゴールから遠ざかるので……。でも(時間がもったいないから)「トイレは1日1回」「昼食はとらない」といったルールを課していたのは事実です。若く人生経験がないとむちゃができ、実際にやり切ったりもしますよね(笑)。それも良い経験です。
──最後に読者にひと言。
今、日本は世界有数の経済大国からゆっくり下山している感覚があります。でもそんな今だからこそ「やっぱり日本はすごい」と希望をもたらすような――大谷翔平選手の企業版みたいな会社がもっとあればいいと思います。
これからはより少ない人数で、この国を回していかなければなりません。ですから今後は仕事に必要な手間を減らし、社会やビジネスの生産性を高めるような「ヘルシーな事業」に社会的意義とチャンスがあると思います。私も社会にインパクトを与える事業を成功させますので、皆でがんばりましょう!
Rule.01|課題を見つけたらソリューション仮説を立てる
Rule.02|最速でトライし、最速で失敗し、最速で次に行く
Rule.03|常に「上」だけをベンチマーク
弁護士ドットコム
代表取締役社長兼CEO
元榮太一郎(もとえ・たいちろう)
1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、旧司法試験に合格、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に入所。05年に退所し、オーセンスグループ(現弁護士ドットコム)を設立、16年には参院選に立候補し当選、財務大臣政務官を務め、22年、社長に復帰。
取材・文/夏目幸明 撮影/浦 将志