全固体リチウム金属電池セルでの重量エネルギー密度350Wh/kg級の実証に成功
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ソフトバンクとEnpower Japanは、全固体電池の開発において、固体電解質の均質化に伴う活物質比率の増加、および固体電解質層の薄膜化などの技術開発に成功。全固体リチウム金属電池セルでの重量エネルギー密度350Wh/kg級の実証に成功したと発表した。
ソフトバンクとEnpower Japanは、成層圏から通信サービスを提供するHAPS(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)などにおける活用を想定した次世代電池の研究開発を進めている。
このHAPSの運用では、体積エネルギー密度(Wh/L)より重量エネルギー密度(Wh/kg)の高さが重要視され、軽量で大容量のバッテリーが必要となる。
これまでに液系リチウム金属電池セルでの重量エネルギー密度520Wh/kgの実証や、全固体リチウム金属電池セルでの重量エネルギー密度300Wh/kgの実証に成功している。
■350Wh/kg電池セルと充放電カーブ
ソフトバンクとEnpower Japanは、これまでに正極‐固体電解質層の界面抵抗の低減や正極合材中の固体電解質の重量比削減、固体電解質層の薄膜化などの技術改良を行ない、重量エネルギー密度300Wh/kg級の全固体リチウム金属電池セルの開発と実証に成功している。
今回、さらなる重量エネルギー密度向上のために、界面抵抗の低減化に向けた材料の均質性の改善に取り組んだ。
全固体電池は、液体電解質とは異なり、正極活物質‐固体電解質の界面の密着性が低いため、イオン伝導に関わる界面抵抗が増加して、電池容量の減少や、出力特性と寿命特性の低下、正極活物質‐固体電解質間や固体電解質間同士の界面形成が難しいという課題が生じる。
これらの課題解決のために、ソフトバンクとEnpower Japanは、原料の粒度調整や粉砕プロセスの改良による固体電解質の粒径の制御に加え、成膜プロセスにおいて粒子の分散性を改良して、固体電解質の均質化に成功。
これにより、導電材の分散性が改善され、正極活物質利用率が高まり、また電極層の平滑性向上によって電極間に良好な界面が形成されて、大面積での高容量化と短絡抑制が可能になったという。この結果、全固体リチウム金属電池セルの重量エネルギー密度を、350Wh/kgまで向上させることに成功した。
小型セルでは、392Wh/kgや200サイクルを実証しているが、大型パウチセルではサイクル途中で短絡するという課題が残っている。今後は、電極の大面積化や積層状態でも短絡を防げるように、さらなる材料と電極の均質化技術の開発を進めていく計画だ。
ソフトバンクとEnpower Japanは今回の発表し際して、次のようにコメントしている。
「両社は今後も次世代電池の高容量化に向けた研究開発を続けて、2024年度中に重量エネルギー密度400Wh/kgの実証を、その後2026年度に1,000サイクル以上の長寿命化を目指します。
また、体積エネルギー密度が既存の液系リチウムイオン電池セルと同レベルであることや拘束圧が高いといった課題を解決する要素技術の開発も進めます。
これにより、全固体電池のさらなる性能向上と実用化を目指すとともに、HAPSやドローンなどの航空分野、IoT機器や車載用途への展開を進め、次世代電池による社会課題の解決に向けた多方面での貢献を実現していきます」
■ソフトバンクの電池開発戦略
関連情報
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/055/
構成/清水眞希