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熊野古道で体験する「アドベンチャーツーリズム」の真髄

2024.07.13

モノ消費からコト消費へ――商品そのものを所有する価値から、商品やサービスから得られる体験の価値に重きをおく消費行動の変化を指しており、この数年ですっかり定着した表現だ。

旅行も例外ではない。世界で「アドベンチャーツーリズム」という観光形態の注目が高まっており、世界最大のツーリズム機関Adventure Travel Trade Associationは「自然」、「アクティビティ」、「文化体験」の3要素のうち2つ以上で構成される旅行のことを「アドベンチャーツーリズム」と定義している。

国を挙げて推進する「アドベンチャーツーリズム」

「アドベンチャー」といっても、滝下りなどハードな「冒険」を指しているわけではない。一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会のホームページでは「旅行者が地域独自の自然や地域のありのままの文化を、地域の方々とともに体験し、旅行者自身の自己変革・成長の実現を目的とする旅行形態」と説明されている。

国土交通省観光庁のホームページを見ると「(世界で)アドベンチャーツーリズムには約62兆円の巨大マーケット」があり、「アドベンチャーツーリズムを楽しむ旅行者の消費額は通常旅行者の2倍」とある。

つまりアドベンチャーツーリズムとは、インバウンド層や富裕層を主なターゲットとしたもので、日本の地域の魅力ある自然や文化、食などの資源を、アドベンチャーツーリズムに有用な観光コンテンツとしてつくり上げる取り組みを推進しようとしているのだ。

とはいえ日本ではまだアドベンチャーツーリズムの知名度が低く、受け入れ環境の整備が整っていない現状がある。そこで積極的に普及活動やアドベンチャーツーリズム推進人材の育成を進めている企業のひとつがJALだ。富裕層やインバウンドだけでなく、全ての人々がアドベンチャーツーリズムを楽しめるよう、アクティブシニアやファミリーなどそれぞれの層に最適な商品ラインナップを幅広く揃えている。

中でも力を入れているエリアのひとつが、和歌山県の「熊野古道」だ。2004年に世界遺産に認定され、今年で20周年。パワースポットとして名をはせる熊野古道で体験するアドベンチャーツーリズムとはどのようなものだろうか?

今回は限られた時間を最大限に生かしてアドベンチャーツーリズムを楽しめる、熊野古道のツアーに参加したレポートをお届けする。

2泊3日で「おいしいどこ取り」できる熊野古道の旅

参加したツアーは「和歌山県 世界遺産「熊野古道」をめぐる紀伊山地の参詣道散策 3日間」。その名の通り、2泊3日で熊野古道を訪ねる旅で、週末プラス1日の休暇でも行かれる参加しやすいツアーだ。

羽田から南紀白浜空港は約1時間10分のフライト。搭乗時間だけをみれば、新幹線で東京から名古屋に行くより短いことに驚いた。

南紀白浜空港から熊野古道までは、観光タクシーで移動する。レンタカー以外ではバスでも移動できるが、本数が少なく、いつも時間を気にしていないといけない。

このツアーの特徴のひとつがこのタクシーでの移動だ。到着したらすぐに荷物を乗せて観光場所へ向かうことができ、地元のタクシーなので、運転手さんからも土地の話を聞く楽しみもある。

1日目:語り部さんと共に熊野古道歩き、そして温泉宿へ

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は和歌山県・奈良県・三重県にまたがる場所にあり、三県を結ぶ本宮地区にある観光拠点が「世界遺産熊野本宮館」だ。熊野古道の杉をふんだんに使用してつくられた建物には、熊野古道の歴史や土地を解説する展示があり、これから巡る数々の寺社で押せるスタンプラリーの台紙なども手に入れられる。

ここでガイドを務めてくれる「語り部」さんと合流し、またタクシーで移動し、いよいよ熊野古道歩きの始まりだ。

・世界遺産熊野本宮館
住所:和歌山県田辺市本宮町本宮100-1
電話:0735-42-0751
開館時間:9:00~17:00
定休日:無休

語り部さんの解説で土地を深く知る

最初に歩いたのは、関所があり、かつては三軒の茶屋があってにぎわったという三軒茶屋跡。熊野古道が世界遺産に認定される前から、語り部の活動を始めていたという松本さんの説明を聞きながら、ゆるやかな山道を登っていく。

まっすぐ伸びる杉の木漏れ日が気持ちよく幻想的で、歩いているだけでも充分に楽しいのだが、説明があると全く違う。「何かの石」と思っていたものが、関所の方角を示すためのものだったり、「何かの標識」と思っていたものが、500mごとの距離を示すものだったと知ることで、土地への解像度がめきめきと上がる。

一般的な「ガイド付きツアーの旅」と大きく違う点は、このツアーの場合は1~3名の1部屋ごとに、語り部さんが1人、つきっきりでいてくれるところだ。大人数だと質問しづらかったり、話が聞こえにくかったりする問題が起きない。

また、歩くスピードも合わせてくれるので、その点でもノンストレス。ちなみに語り部さんたちは、ある程度のお年は召されているものの、めちゃくちゃ健脚で、悪路でもひょいひょいと登っていく……。

途中で立ち寄ったのは、絶景ポイントの見晴らし台。夕暮れの景色も素晴らしいのだとか。平日のせいか、道中で会うのは日本人より海外観光客のほうが目立っていた。

石畳を歩き、熊野本宮大社を訪ねる前に身を清める場所とされていた祓殿王子(はらいどおうじ)社跡を通り、スタンプラリーのスタンプを。

そこから少し住宅街などを抜けていくと、熊野本宮大社に到着だ。やはりこの背が高い杉のせいだろうか? 明治神宮や伊勢神宮にも通じる、清らかな空気に堂々とした佇まい。

現在の熊野本宮大社は、大洪水で被害を受けて残った社殿を移築したもので、ここから15分ほど歩いた場所にある大斎原(おおゆのはら)が、もともと熊野本宮大社のあった場所だ。

現在は大鳥居がのちに建立され、田んぼの中の威風堂々とした姿は、絶好の映えスポット。

今回の熊野古道歩きでは、あちこちに3本の足がある八咫烏(ヤタガラス)をモチーフにしたものを目にした。八咫烏は神武東征のときに、熊野から奈良のほうへ道案内を務めた烏として、神のお使いとされている。

河原の露天風呂という絶景ロケーション、川湯温泉・山水館川湯みどりや

またタクシーで移動し、川湯温泉にある山水館川湯みどりやに宿泊。この温泉旅館のウリは、なんといっても河原にある露天風呂だろう。大塔川を臨む露天風呂は、男風呂、女風呂から外に出られるようになっていて、湯あみ着を着用しての混浴スタイル。

内風呂の温泉でゆっくりするも良し、川の流れを楽しみながら露天風呂に入るもよし…。特に夜は、あえて明かりを最小限にしているため、ほかの人の存在もさほど気にならない。星空と川の音、そして硫黄の香りたちこめる温泉で心からリラックスすることができ、これもまた没入体験だと感じた。

食事はブッフェスタイルで、土地の食がふんだんに盛り込まれ、ファミリーや海外からの旅行者も楽しめるよう、天ぷらなどさまざまなものが用意されていた。

と、ここまではロケーションのいい大型旅館……というイメージでいたが、一番驚いたのは、この川を臨む露天風呂という景観を守るため、建物のリニューアルなどにお金をかけるより、川の周りの土地を購入することを優先したという点。

建物は清潔で快適だが、今どき風ではなく、昔ながらの温泉旅館だ。そこには、自分たちの最大の美点を最優先しているという事情があったのだ。

・山水館川湯みどりや
住所:和歌山県田辺市本宮町川湯13
電話:0735-42-1011

2日目:熊野の神社めぐり三昧

朝食後にお迎えにきてくれたタクシーにのり、向かったのは神倉神社だ。熊野大神が熊野三山として祀られる以前に、一番最初に降臨された聖地といわれる場所で、峻崖の上にある。東京の愛宕神社もびっくりの急さ、そして遥かに長い五百数十段の先にご神体があるそうだが、このツアーでは登らず下から参拝。

雰囲気だけでもと数十段上がってみたが、急こう配の階段は高所恐怖症にはそれだけですでに怖い。時間がかかるのと、体力をかなり消耗するのもあるが、ここをきちんと登るのであれば、時間に余裕があるときがよいだろう。

そしてまたタクシーで移動し、熊野三山のひとつ熊野速玉⼤社へ。御神木である樹齢千年の「ナギ」の葉っぱを懐中に収めてお参りするのがならわしとされていたとか。

この日のランチはフランス料理店「Bistro ILE DE FRANCE」(ビストロ・イル・ド・フランス)で熊野ハンバーグセットを。この見た目にも美しいハンバーグは、先ほど下から参拝した、峻崖の上にある神倉神社を表現しているもので、‟南紀ジオフード和歌山県知事認定メニュー”。驚くのは、かつての新宮城の城下町だった街並みを再現したジオラマ。なんとシェフが制作したものだそうで、目を見張る出来栄えだ。

・Bistro ILE DE FRANCE
住所:和歌山県新宮市丹鶴3-1-18
電話:0735-22-2365
営業時間:LUNCH 11:30~13:00(L.O.)、DINNER 17:30~19:30(L.O.)
定休日:月曜日

那智山へ続く石畳、そして余りの迫力に言葉も出ない那智御瀧へ

食事の後は、午前中に時間がなくて後回しになった阿須賀神社を訪問し、語り部さんと合流して那智古道歩きへ。今回のツアーはほとんどの行程をタクシーで回るライトなものだが、ここが一番の正念場。

ほぼ石段を歩く。しばらく坂を登ると「大門坂」と記された石碑があり、ここからが本番かとやや愕然とする(笑)。苔むした雰囲気のある石段は、急ではないが延々と続く。とはいえ、周囲は歩いているご老人のツアーも多く、普段履きのスニーカーでも充分歩けるくらいのものだ。

樹齢800年を越す老杉や、夫婦杉などフォトスポットも点在し、ひたすら登り続けて住宅街も通り抜けると、また467段もの階段を登って熊野三山の3つめ、熊野那智大社と隣接している那智山青岸渡寺に到着。

華やかな熊野那智大社と、風情のある那智山青岸渡寺の対比を面白く眺めながら、また歩いて辿り着いたのは熊野那智大社別宮飛瀧神社・那智御瀧。御瀧そのものをご神体として祀っている神社のため、社はない。

少し遠めにも見ることができるが、300円の参入料を支払うと真正面まで近づける。

日本三名瀑の一つといわれる落差133mの滝の迫力と美しさは、いつまでも眺めていられるほど。最初は、外から見るでもいいかと思っていたが、これは絶対に参入料をケチらずに奥まで進むべき。

圧倒的スケールのホテルに外国人もおおはしゃぎ「ホテル浦島」

疲れがふっとぶ圧巻の瀧を見た後は、またタクシーでホテルへ向かう。この日宿泊した「ホテル浦島」は、地続きなので車でも行かれるが、ホテルの送迎船に乗るのがおすすめだ。

なんと迎えに姿を現したのは、カメを模した船である。確かに「浦島」だから……。

そして到着したホテル浦島は、大規模といっても普通の大規模ではない、4つの館と2つの洞窟温泉、2つの内湯温泉からなる巨大温泉郷だ。

宿泊したのは、狼煙山の山頂に建てられた山上館で、本館からは全長154mものエレベーターで登っていくという、桁違いのスケールに驚く。

「ホテル浦島」の目玉である洞窟温泉「忘帰洞」は、波がうちつける音を間近に聞きながらの贅沢なつくりで、これもまた唯一無二のロケーション。

館内にはゲームコーナーというよりはゲームセンターといってもいいような広さのコーナーや、複数の館内レストラン、コンビニをそなえ、敷地内には神社までふたつある。

熊野古道にアクセスしやすい旅館としてはもちろんだが、この旅館に行くこと自体も旅の目的に充分なりうる広さと充実度で、まるでひとつのアミューズメントパークのようである。

ここも平日のせいか、外国人観光客の姿のほうが多いくらいだったが、この昭和感と貴重なロケーションの温泉など、熱海に熱狂するようなZ世代の若者にも訪れてみてほしいと感じた。

・ホテル浦島
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝浦1165-2
電話:0735-52-1011

3日目:お土産を買い込み解散

最終日は、通り沿いのロケーションのよいフォトスポットを少し見て、漁協直営の海産物と南紀のお土産がなんでも揃う「とれとれ市場」へ立ち寄った。

中に市場やお土産屋、フードコートがあり、併設されたBBQ施設で市場で購入した食材を楽しむこともできる。

なんといっても注目なのがはやり魚介類。生ものを持って帰る装備がなかったので、解散してから空港でつまもうと寿司を購入。南紀白浜空港はさほど大きくないので、お土産を調達するなら、ここに寄ればあらゆるニーズが事足りるだろう。

ここでしか買えない「みかん大福」や「金山寺みそ」などを手に入れ、またタクシーで空港まで送ってもらったら解散だ。

・とれとれ市場
住所:和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2521
TEL:0739-42-1010 フリーダイヤル:0120-811-378
営業時間:8:30~18:30

荷物を管理する心配もなく、まさに「いいとこ取り」の大人旅

今回のツアーを終えてみて一番感じたのは、大人の旅っていいな。ということだ。空港についた瞬間から荷物はタクシーに乗せっぱなしでよく、熊野古道はガイドである語り部さんがつきっきりでいてくれるので、事前に学ぶ時間がなくても、土地についての理解を深められる。

熊野古道の自然はそのまま眺めるだけでも素晴らしいのはもちろんだが、ただ自然や歴史的建造物を見てリフレッシュするだけでなく、そこはどんなどころで、どんな意味を持つ場所なのか学びながらの旅は、とても贅沢な経験。これが「アドベンチャーツーリズム」の肝であると言えるだろう。

食べる場所も考えなくていい、交通手段も考えなくていい、3日間を空けることさえできれば、時間の無駄なく熊野古道のいいとこ取りをした体験ができて、協調性がない筆者のような人間でも、少人数でもガイドがついて、臨機応変に旅ができると煩わしいことが何ひとつない。

ある程度、仕事のコントロールができ、そろそろ子育てからも手が離れたような方たちが、旧友と大人旅に行くようなときの選択にも、「熊野古道で楽しむアドベンチャーツーリズム」は、かなりアリなんじゃないだろうか。今回参加したツアーはジャルパックから販売されており、すでに3月分まで発売中だ。

■ツアー詳細
和歌山県 世界遺産「熊野古道」をめぐる紀伊山地の参詣道散策 3日間
https://www.jal.co.jp/jp/ja/domtour/jaldp/kumanokodo/?utm_source=dime&utm_medium=article&utm_campaign=21_adventure

取材・文/安念美和子

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