「誰かの人生を正解とせず、自分の幸せを実現していくことが大切」フローリスト・前田有紀さんに聞くセカンドキャリアを成功させる秘訣
2024.07.12情報を伝えるスキルで、花農家の「顔」や考え方が見える花の届け方を
――万事に慎重な前田さんが、家賃、人件費、光熱費などを要する実店舗を開店した背景には、「自然と人との距離を縮めたい」という目標があったから。開店後、お店は安定した売り上げを続けており、軌道に乗ったことを感じているそうです。
そんな前田さんが今、伝えたいことは、花農家さんの様々なチャレンジ。
お客様の顔を見てお花を届けるようになってから、花の生産者さんについても深く知りたいと思うようになりました。毎年どこかの花農園に伺い、生産状況や生の声を聞き、お客様に届けています。
直近では、長野にある『信州片桐花卉(かき)園』さんに行きました。ここはアルストロメリア(花の種類)の生産で知られているのですが、去年、火事に遭われてしまって。私たちもささやかながら復旧のお手伝いをさせていただきました。
現地に行って感じるのは、若い世代の方が、先人の後を継ぎ、新しい試みを重ねつつ頑張っていること。例えば、ハウス栽培だけでなく露地栽培にもチャレンジしたり、低農薬を試みたりして、環境負荷が少なく持続可能な栽培を考えている農家さんもいらっしゃいます。
私には、「情報を伝える」という前職で培った、とても大切なスキルがあります。花の世界は皆が知らないまま、考えなければいけない問題や、解決すべき課題が流れてしまっていることが少なくありません。花農家さんの「顔」や考え方が見えるような花の届け方を今後も行っていきます。
「好きなこと」がわからなくなったら、「小さな好き」をたくさん集めて
――前田さんは「好き」を見つけ、目標を決め、そこに向かって進んできました。自分の「好き」が見えない人には、いろんなことを試し、心が動くかどうか、自分の中の声を聞いてほしいと言います。
年齢や世間体などにとらわれてしまい、与えられた仕事に真面目に全力に取り組んでいると、いつの間にか自分は何が好きだったかわからなくなってしまうことも多いです。
私自身も「花」と決めるまでは、多くの試行錯誤を繰り返していました。そして会社を辞めたから、今があります。
私の経験がお役に立てばと、『好きを仕事に研究会』を立ち上げました。これは少人数のオンラインゼミで、「自分が何をしたら心地よく幸せでいられるか」を突き詰めること。
人によって「好き」の実現方法は全く異なり、週末に好きなことをすれば幸せという人もいるし、私のように会社を飛び出して世界をガラッと変えてしまう人もいる。誰かの人生を正解とせず、自分の幸せを実現していくことが大切なのです。
このゼミには、これまでに50名くらいの方が参加し、中には好きなことで事業を立ち上げたり、フリーランスとして活動している人もいます。
今、「好きなことがわからない」と思っている人におすすめしたいのは、「小さな好き」をたくさん集めること。料理、美容、食べ物、ファッション、写真など、自分の好きな感覚を広げていき、「自分が笑っていられることは何か」をたくさん書き出してみてください。
きっとこれを続けるうちに、本当に好きなことが見つかるはずです。好きを見つけることは、自分の人生の主導権を、取り戻すことに繋がっていくと思うんです。
好きなことを続けていると、自信も生まれてきますから、きっと物事の見方、感じ方が変わっていくはず。その先に、未来があると思います。
社会からの評価ではなく、自分の好きなことをして笑って生きているかどうかをまず考える。それを追求した先に、多くの人を幸せにする未来があるはずです。まずは、心が動くことを探すことから始めてみませんか?
『gui flower』
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東京都渋谷区神宮前4-23-6 ペリーハウスNO,2.3
取材・文/前川亜紀 撮影/小倉雄一郎(小学館)