「誰かの人生を正解とせず、自分の幸せを実現していくことが大切」フローリスト・前田有紀さんに聞くセカンドキャリアを成功させる秘訣
2024.07.12誰もが一度は「好きなことを仕事にしたい」と思ったことがあるはず。テレビ朝日アナウンサーからフローリストに転身した前田有紀さんは、「花を仕事にする」と心に決めるまで5年の歳月をかけた後、留学を経て生花店での修業を積み、着実に目標に向けて動き出します(前編)。
後編では、フリーランスとして2年間の活動後、会社を立ち上げた経緯や、事業を広げるときの心構えについて伺います。
前田有紀
株式会社SUDELEY(スードリー)代表取締役、生花店NUR flower(ヌア フラワー)』オーナー。
1981年、神奈川県出身。慶應義塾大学卒業。テレビ朝日でアナウンサーとして活躍後、2013年退社後、英国に留学。コッツウォルズ・グロスターシャー州の古城でインターンのガーデナーとして勤務後、生花店『ブリキのジョーロ』(東京都)に3年間勤務。2018年フラワーブランド『gui(グイ)』を立ち上げ、2021年に実店舗『NUR flower(ヌア フラワー)』(渋谷区神宮前)を開店。店舗運営、イベント装飾のほか、ワークショップ、『好きを仕事に研究会』を主宰。プライベートでは7歳と3歳の男児の母。
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2018年に会社を立ち上げ。全て自己資金でまかなう慎重なスタート
――前田さんは、35歳のときにフリーランスとして独立後、腕一本で活躍の場を広げ、後に会社を立ち上げます。
フリーランスのフローリストになった当初は、個人の方からの依頼、レセプションの装飾など、多種多様な仕事をいただきました。目の前の仕事を大切にし、依頼した方が望む形でお花を届け続けたのです。そのうちに、仕事の幅が広がっていったと感じています。
大きなチャンスがやってくるというよりも、目の前の1つ1つを大切にし続けるうちに、目標である「人と自然の距離が近い暮らしを、都会の中でも」という思いが強くなっている実感がありました。
ただ、私一人の力では限界がある。そこで、一緒に活動するチームが必要だと感じ、2018年に会社を立ち上げました。私の考え方や当時の状況、事業規模から借り入れはせず、全て自己資金でまかないました。かなり慎重にスタートしたと思います。
当初は、フラワーブランド『gui(グイ)』のオンラインでの販売、装飾、イベントの出展が中心でした。徐々に私たちのことを知ってくださる方が増え、注文も依頼も安定するように。
経営はうまくいかないことがほとんどです。事業計画や売り上げ目標を設定していますが、思った通りにはならないというのが、率直な感想。難しいとは思いながらも、現在は7期目に入りました。今は私と、正社員3名、数名のアルバイトのスタッフに支えられながら会社を運営しています。
信頼できる仲間同士で意見を出し合う。大切にしているのは「心が動く」こと
――人を雇い、事業を成長させていくことは、社会的な責任も伴います。フリーランスの働き方とは違ってきますね。
最初は試行錯誤で、とにかく慎重に事業を広げていきました。どんなときも、信頼できる仲間同士で意見を出し合っていると、いい方向に進んでいきます。それぞれの考え方や感覚が違うので、ひとりで事業をするよりも広がりがありますし、毎日気づかされることが多いです。
私も社員も大切にしているのは「心が動く」こと。気持ちが動かないといいものはできません。利益の追求も大切ですが、「人と自然の距離が近い暮らしを、都会の中でも」に向かって、心が動いているかどうか、笑顔になれるかどうかが大きいと思います。
だからこそ、コロナ禍真っ只中の2021年、生花店『NUR flower(ヌア フラワー)』をオープンしたのです。当時、コロナ禍でのオンライン需要が高まっており、自分で花を選んで飾ることまでも、リモートになってしまうことに疑問を覚えていたから。実際に花を見て選ぶという、自然を感じる特別な体験ができる場を作ったのです。
店に並べる花は、自然の美しさを表しているものを選んでいます。季節を感じる花、咲き方に特徴がある花、複数の色で構成している花、光によって表情が変わる花……いずれも、たった1輪であっても、ずっと眺めていたくなる花を選ぶようにしています。
仕入れは店長が行なっているのですが、私には選べない花が店頭にあることに気付くと感性の違いに気づきます。チームで店を育てている実感があり、見た人が笑顔になる花を届けられていると自負しています。