脱・ストイック 心に余白を持つことで、ストレスをリリースできる
サッカー元日本代表
中村憲剛さん
2003年に川崎フロンターレに加入以降、引退まで川崎に在籍する。現在はアカデミー世代の育成サポートや地域貢献、プロモーション活動などを行なう「Frontale Relations Organizer(FRO)」としても精力的に活動中。
シーズン中の疲れやストレスはオフの家族時間で一気に解消
──現役時代、肉体疲労に加え、脳疲労を感じる場面も多くあったと思いますが。
すごくありましたね。サッカーは瞬時の判断、スピードが常に求められます。カテゴリーが上がるごとにさらに厳しくなるので、プロになりたての頃は特に脳の疲れを感じていました。
──憲剛さんといえば現役時代、司令塔として、常にチーム全体の動きに気を配っていたイメージがあります。
このポジションは相手チームを把握したうえで、自分たちに優位に進めることを一番に考えなければならないんです。自分だけではなく、チームのほかの選手の動きや、相手選手の分析もしつつプレーするので、常時、思考がぐるぐる動いている。90分ずっとその状態なので、今、思えばよくやっていたなと思います。
──そんな試合中の脳疲労は、どんな形で解消されていたのでしょうか?
シーズン中に解消されることはなかったかもしれません。休日は前節の試合を見返すし、練習が始まればまた頭を使う。週末が近くなると次に対戦する相手の試合も見るので、やはり脳は休めません。だからこそ、シーズンが終わると、基本的には一切、サッカーに関わらないようにしていました。スイッチをオフにすることで、来シーズンに向け、英気を養うことができる。その間は家族とゆっくり過ごすことで、疲労回復に務めていました。
──現役引退後は役割も変わり、違う意味での疲れを感じることも増えたのではと思いますが、最近はどうでしょう?
書籍(『中村憲剛の「こころ」の話』)の執筆でしょうか。読者にどうやったらわかりやすく伝わるかを意識しながらの作業は、脳をフル稼働した感覚でした。
──人に伝える難しさもありますよね。
はい。人間がストレスをためるのは、相手が自分のことをわかってくれない時ですよね。僕の場合、年長者として時に注意をしなければならない場面もありましたが、そういう時こそ、直接、相手の考えを聞くようにしていました。わかった気にならず、実際に対面して話し合うこともストレス回避の秘訣だと思います。
──サッカーの試合でも、イライラする選手をよく見かけます。一方で憲剛さんは冷静沈着なイメージが強いですが。
僕は基本的にはポジティブなほうですが、試合前はよく最悪の事態を想定していました。例えば「今日は全部のプレーをミスする」とか。ただ、そう考えておけば、1本でもパスをつなげば成功。余計なイライラを防ぐため、ハードルを下げておくことも重要かもしれません。
──著書の中でも、「あえてストイックになりすぎないよう心がけるほうがうまくいく」とおっしゃっています。
僕自身、プロになった当初は少しでもパフォーマンスを上げようと睡眠時間や食生活を徹底的に管理していたんです。ただそれがストレスになってしまって、逆効果に。そこで節制をやめ、炭水化物や甘いものを少しだけ食べるようにしたら、幸福感がすごくて(笑)。我慢しすぎないことで、パフォーマンスが上がるタイプなんだとわかりました。ストイックなプロ選手は多いですけど、僕には当てはまらなかった。でもそれは一度徹底的に試したからこそわかったこと。何事もいいと思ったことは一度試してみる。ただ、それで合わなかったら、いくら世間で常識と言われていることでもやめていい。その取捨選択も大切で、時に心や行動に余白を持って、完璧を求めすぎないこと。そうすることで疲れをうまく回避できると思います。
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