私たち人間が当たり前にしている呼吸。実は、その呼吸こそ、脳疲労回避に役立つだけでなく、仕事のパフォーマンスアップにも大きく貢献するという。いったいどんなメカニズムなのか? その方法とコツを解説する。
脳神経内科医
山下あきこさん
6万人超に及ぶ診療実績をベースに、マインドフルネスを取り入れた薬に頼らない予防医学に注力。『「やめられない」を「やめる」本-脱・依存脳-』(小学館)や『やせる呼吸』(二見書房)ほか、著書も多数。最新刊は7月1日発売の『マインドフルネスこそ最強のクスリ』(スール)。
呼吸に意識を集約することで様々な雑念を脳から引き離す
「脳疲労の原因は、考え続けて、雑念が止まらなくなること。使わなくてもいい思考が回り続けることによって、脳が疲弊してしまうのです。その疲れを取る方法のひとつとして、呼吸があります」
そう語るのは、脳神経内科専門医の山下あきこさん。生きているうちは絶え間なく続けている呼吸が、いったいどう疲労回復と結び付くというのだろうか?
「呼吸には2種類あります。1つ目は普段している無意識的な呼吸。2つ目は深呼吸やため息のように、意識的に行なう呼吸です。前者は、延髄の呼吸中枢が指令を出して行なう胸郭主導の胸式呼吸、後者は、自らの意思が働くことで意識的にお腹に空気を送り込んで吐き出す腹式呼吸。同じ呼吸でも、働きかける部分が大きく違います。後者の腹式呼吸を使って、〝今、呼吸をしている〟ということだけに意識を向け、自然な呼吸を繰り返すことで、様々な考え事から脳の思考を切り離すことができるのです」
意識を呼吸に集中させ、回転し続ける脳をいったん休止させることで、疲労の回復を図ることができるというのだ。さらに呼吸には、必須アミノ酸であるトリプトファンから作られる脳内の神経伝達物質の一種で、〝幸せホルモン〟とも呼ばれるセロトニンを増やす効果もある。
意識的呼吸(腹式呼吸)のメカニズム
呼吸前後の血中セロトニン濃度の変化
意識的な呼吸を行なった時の、血液中のセロトニン濃度を調べた実験結果。集中して呼吸を始めて5分ほどで効果が表われ、セロトニンが脳に働きかけることで頭が冴える。
出典:有田秀穂『脳科学者が教えるやっかいな脳のクセをリセットする朝5分の呼吸法』(総合法令出版)
最近疲れてませんか?DIME最新号は「脳疲労の解消法」と「複業」の大特集
祝日のない6月、GWから働き詰めでそろそろ疲れがたまってくる頃ではないでしょうか?
今月のDIMEは「脳疲労解消法」を大特集! ムシムシと暑い中での通勤、職場での緊張感、梅雨ならではの気圧の変化、鳴り止まないスマホの通知など様々な原因で疲れは溜まっていきます。ですが、今回取材したところによるとすべての疲れの原因は「脳」、そしてそれを解消してくれる方法はたった一つしかないそうです。それは一体、何なのか? 今日からすぐ実践できる疲れの解消法、パフォーマンスを上げるノウハウを40ページの大ボリュームで紹介します!
また、第二特集では自己実現やひとつの会社に頼らない生き方として注目されている「複業」の始め方を実践者に徹底取材。疲れを癒やし、明日への活力をチャージできる一冊です!