ネガティブ思考は、仕事や遊び、人間関係のバランスを保つうえでも大きな壁。一生つきあっていくものと諦めていたら、意外にも脳疲労を回復することでポジティブ思考に。日常生活でできる変換のコツをマスターしよう。
脳を疲れさせない生活でポジティブ思考に変換できる
失敗をいつまでも引きずったり、些細なことで落ち込む……。そんなネガティブ思考を変えたいけれども、性格だから仕方がないと諦めている人は多いはず。だが実はこれ、性格ではない。
自身のYouTubeで、多くの脳疲労の悩みに答える精神科医の樺沢紫苑さんいわく、ネガティブ思考は脳の疲れに起因することも多いのだとか。
「脳の側頭葉の内側は、人が危険・安全を判断する扁桃体という部位があります。眼の前にボールが飛んできた時、一瞬で危険を判断して身をかわす一連の行動なども扁桃体の働きによるものです」
扁桃体はいわば脳の警報装置。例えば道を歩いている時に蛇に遭遇したとしよう。扁桃体は危険を察知して一気に興奮するが、よく見たら蛇ではなく紐だとわかると、アラートは解除される。
「一方で脳が疲れていると、前頭前野の血流が鈍り、活動性も下がるため、扁桃体のブレーキが壊れ、アラートが鳴りっぱなしとなり、危険や不安といったネガティブな思考だけが暴走します。こうなると、些細なことですぐに不安を覚え、『もう何をやってもダメだ』『何か失敗するんじゃないか』など、何事も悪いほうに考えてしまうわけです」
前頭前野は集中力や記憶力、判断力、決断力、創造性に加えて、コミュニケーションや共感などの処理も行なっており、脳疲労で扁桃体がパニックになると、仕事や学習、人間関係といった様々な物事にネガティブ思考が波及してしまう。
「私のXやYouTube調べでは、疲れていないと答えた人はわずか8%。9割以上の人が脳疲労を自覚していました。逆に言えば、それほど物事をネガティブに考えてしまう人は多く、昨今はスマホの見すぎで脳はますます疲弊していますから、今後もさらに増えていくと思います」
ちなみに、ネガティブからポジティブに思考をスイッチするにはコツがある。
「言葉は感情に引っ張られるので、まずは意識してネガティブな言葉を使わないこと。〝ダメだ〟と思った時こそ、〝いや、できる〟〝いや、がんばろう〟と前向きな言葉を付け足すことです」
さらに、ポジティブとネガティブの切り替えをしている脳内の神経伝達物質、セロトニンをアップさせることもネガティブ思考脱出の重要な切り札となる。
「セロトニンの分泌量が減少すると、気持ちの切り替えができなくなり、仕事のミスをくよくよ考えて、失敗を引きずり続けることになります。セロトニンは太陽の光やリズム運動でスイッチが入るので、朝散歩(下参照)や軽い運動をするだけで気持ちが晴れやかに、ポジティブな気分に切り替わっていきます」
セロトニンは脳の指揮者とも呼ばれているので、分泌量が増えれば、脳疲労解消にとどまらず、イライラが減り、切れやすい衝動の抑止にもなるのだという。
「基本は脳疲労を少しでも減らすこと。そのためには、スマホを見る時間を減らし、睡眠をしっかり7時間以上とることも大切。下に示した方法も有効ですのでぜひ試してほしいですね」
作家・精神科医
樺沢紫苑さん
累計発行部数250万部超。近著に『19歳までに手に入れる7つの武器』(幻冬舎)、『脳を最適化すれば能力は2倍になる』(文響社)。
幸せの三段重理論
樺沢さんは「脳内に幸福物質が出ている状態」を、「セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福」の三段重理論で解説する。
出典:樺沢紫苑『精神科医が見つけた3つの幸福』(飛鳥新社)
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