スマホ利用を禁止するだけがデジタルデトックスではない。企業向けのワーケーション一体型プログラムには、脳が疲れないスマホとのつきあい方があった。
日本デジタルデトックス協会
理事/リコネクター
森下彰大さん
2018年に「日本デジタルデトックス協会」に参加。『クーリエ・ジャポン』の編集者でありデジタル・ウエルビーイングの研究も行なう。
使いながらスマホ依存率を下げる新タイプのデジタルデトックス
デジタルデトックスの普及を目的に2016年に設立されたのが「日本デジタルデトックス協会」だ。
「当初は一般向けを想定していましたが、コロナ禍に企業から研修や勉強会、ワーケーションプログラムの作成といった依頼が増えました。働き方をアップデートするなら休み方もアップデートしましょうと、企業向けにデジタルデトックス込みの新しい休み方を提案するようになりました」(同協会理事・森下彰大さん)
注目される理由として、デジタルデトックス体験以外に、チームビルディングの場になることを挙げる。
「デジタルは一度構築した関係を維持するにはいいのですが、相手を知って、信頼感を築くには、リアルで会う必要が絶対にあると思うんです。最終的にリモートでのコミュニケーションが円滑になることも企業のメリットと考え、アナログな場を取り込んだプログラムを作っています」(森下さん)
事例として、ホテルに滞在しながら仕事とオフの時間を楽しむことからスタートし、今後は農泊、島泊なども予定。協会ではアドバイザー養成講座も開き、ソフトの質の向上にも力を入れている。
「デジタルデトックスには、滞在中はスマホを預かるというイメージが強いですが、企業向けだと現実的ではありません。現地を五感で楽しみ、息抜き時間は仲間と交流する、脳の休憩時間も作っています。デジタルの脳疲労を軽減する意味では、スマホ時間を減らすことが大事。その場だけではなくリバウンドしない工夫も加え、帰宅後も実践してもらえるように習慣化するお手伝いに注力しています」(森下さん)
スマホをオフにした時の気持ちよさを体験できる様々な仕掛けを模索し、依存からの脱却を狙うという。
一般に加え、企業、団体向けに様々なプログラムやセミナーを実施。人事、総務のスタッフが受講することが多いという。
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デジタルデトックス・ワーケション研修の一例
写真はホテルなどを運営する「あなぶきエンタープライズ」と『クーリエ・ジャポン』編集部の研修の様子。デジタルデトックスに関する知識や理解を深めつつ、実践にフォーカスしたプログラムを実施する。宿泊プログラムの場合、講習と「デジタルデバイス回収の儀」の後、ストレッチ、ヨガ、呼吸法、焚き火などを行なう。
今回のワーケーション後、デジタルデバイスとのつきあい方に変化はありましたか?
プログラムに参加した団体にアンケートを取った結果、7割以上の人が「デジタルデバイスとのつきあい方に変化があった」と回答。また、「心身にポジティブな変化が起きた」という回答もあった。
サイレント・ウオーク
静かな心を保ちながら目的地に向かうアクティビティー。会話をせず、足裏の感覚に集中!
デジタルデトックス・セラピー
デジタル疲れの解消に特化したアロマオイルを使った整体施術(1回90分)が受けられる。
マインドフルネスを体験
座禅を組み、頭の中の〝おしゃべり〟を止め、「内受容感覚」(身体の中の状態)にフォーカス。
観光体験プログラム
写真の陶芸のほか、木彫りスプーン作りなど、研修先のエリアならではの体験が心を整える。
取材・文/安藤政弘