正常な脳と脳過労な状態はどう違う?
なぜスマホを長時間見ていると脳が疲れてしまうのか……それは脳の仕組みにあった。
脳の情報処理には、情報を入れる「インプット(入力)」。次にデフォルトモード・ネットワークによる「整理・整頓」。そして、話す・書く「アウトプット(取り出し)」の3ステップがある。スマホを見ることで膨大な情報が次々に入力されるものの、デフォルトモード・ネットワークは、入力を遮断しないと、情報の整理・整頓ができない。つまりスマホから情報が入り続ける限り、無駄な情報はたまり続け、脳内がゴミ屋敷化。ゴミが邪魔して必要な情報を取り出せないという悪循環を生み、覚えることや話すことに悪影響を与えるわけだ。
「デフォルトモード・ネットワークを機能させるには、ぼんやりタイム=瞑想時間をつくること。電車の移動中やトイレやお風呂などは瞑想にふけることが可能な重要な空間です。1日の中でこの場所だけでもスマホの使用をやめれば、脳過労は低減され、記憶力や情報処理能力の回復が期待できます」
また、スマホ利用を入眠の2時間前からやめることで、ブルーライトによるスマホ不眠症を防止。睡眠中にデフォルトモード・ネットワークの情報が整理され、目覚めた時には無駄にインプットしたゴミもきれいに片づけられるという。
「意外と思うかもしれませんが、肩こりや身体の痛みなどもスマホを控えることで抑えられます。肩こりの多くは本当に肩が凝っているわけではなく、脳の疲れによる誤作動で肩が張ったように感じるだけ。脳過労は、脳を正常に機能させるための燃料ともいえる神経伝達物質セロトニンの枯渇から引き起こされます。セロトニンは太陽の光を浴びることで回復をしますが、枯渇する原因のひとつがスマホのやりすぎです」
最近よく耳にする〝スマホ鬱〟〝スマホ認知症〟は、スマホ依存の生活習慣を変えることで改善させることが可能だと奥村先生は言う。しかし、そのまま放っておくと本物の鬱病や認知症になる可能性が高まるので注意が必要だ。
「脳過労を解消するには、できる限りスマホを手放す時間を増やして、体を規則正しく動かすことが一番です」
奥村先生監修の脳過労を改善するテクニックは次ページにまとめたので、脳の疲れが取れない、記憶力が落ちているという不安のある人はぜひチェックを。
スマホ脳では情報の整理ができない
脳の情報処理には入力、整理・整頓、取り出しの3段階がある。スマホで連続的に情報が入力され続けると整理が追いつかずにオーバーフロー状態となり、脳過労にもつながる。
前頭葉は作業脳と休息脳に分かれ、スマホに集中している時は作業脳が働いている。同時に休息脳は働かないためデフォルトモード・ネットワークも機能せず、脳の疲労は解消されない。
取材・文/安藤政弘 イラスト/楠本礼子
『スマホ脳の処方箋』(あさ出版)著/奥村 歩「スマホ認知病」状態の脳機能画像より編集部作成