疲労の正体とは何なのか。最新科学でわかった疲労のメカニズムを、医師の梶本修身先生が解説。対策を講じる前に、まずは疲労が起こる仕組みを知ろう。
疲労とは、自律神経の酷使により、細胞がサビて傷つくこと
疲れているのは身体ではなく、脳だった!
年齢とともに疲労に関する悩みは増えていくが、そもそも「疲れ」とはどんなものなのだろうか。長年疲労に関する研究を続ける、東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身先生に、疲労のメカニズムを聞いた。
「実は日本で疲労の研究が始まったのは30年ほど前。それまで『疲れ』は非常に漠然としたものでしたが、最近の研究で原因が明らかになってきています。昔は、疲労とはエネルギーが枯渇して起こるものと考えられていました。しかし、飽食の現代においては、スタミナ料理を食べたところで疲労は回復しません。では、疲労はなぜ起こるのか。それは〝脳の疲れ〟が原因なのです。運動による疲労も、疲れているのは身体ではなく、実は脳だとわかってきました」
運動後の身体の疲れを引き起こすのが脳だと言われてもなかなか信じがたいもの。だが、梶本先生が行なった産学官連携プロジェクトで、それが証明されている。
「プロジェクトでは96人の健康な被験者に運動やデスクワークを4時間行なってもらい、疲労を計測しました。多くの被験者は疲労感を訴えましたが、ボクシングなどの一部の無酸素運動を除き、運動後において、筋肉にはほぼダメージはありませんでした。つまり身体は疲れていないのに、多くの人が『疲れた』と感じたのです」
では、疲労とはどんなメカニズムで発生するのか。
「仕事や運動など、人間は様々なシーンで脳の酸素需要が高まります。すると、脳に活性酸素が発生し、自律神経の細胞をサビさせます。このサビこそ疲労の正体です」
自律神経とは脳に酸素と栄養を安定供給するための司令塔。肺に酸素を吸わせ、胃腸に栄養を摂りこませ、心臓と血管に指示を出して、全身から脳に酸素と栄養を安定供給させる。ここがサビて不調を来せば、脳の生命活動に支障が生じる。そこで警報として発生するのが〝疲労感〟だ。
「誤解されがちですが、『疲労』と『疲労感』は別モノです。この事実を知らないがゆえに、多くの人は疲労感を抱くと身体の疲れを取ろうとする。でも本当に重要なのは脳の疲れを取ることなのです」
疲れに関する研究のスペシャリスト
医師・医学博士
東京疲労・睡眠クリニック院長
梶本修身(おさみ)さん
大阪大学大学院医学研究科修了後、大阪市立大学大学院特任教授、理化学研究所客員研究員などを経て現職。2003年から産学官連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者を担当。著書に『すべての疲労は脳が原因』や『「疲れないからだ」になれる本 頭も心も体もこんなにスッキリ!』など多数。
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