ポジティブな秘密を胸に留めておくと快活な気分に
インスタグラムなどのSNSを眺めてみると、活発に活動しているユーザーの中から〝リア充〟をすぐに見つけることができるが、よく考えてみればSNS上の〝リア充〟はある種の自己顕示欲であるケースも考えられ〝自作自演〟といえなくもない。
とすればこのようなSNS上の〝リア充〟は、むしろ何か満たされない思いを抱えてそれをSNSで充足させようとしている〝非リア〟ではないのかと勘繰りたくもなってくる。
こうした〝幸せアピール〟が受け手に疑念を生じさせ、むしろ幸せには見えなくなるという逆説的な現象をどう考えれば良いのか。
そこで重要なヒントになりそうな研究が、昨年にアメリカ心理学会から報告されている。同研究チームが2023年11月に「Journal of Personality and Social Psychology」で発表した研究では、良いニュースを秘密にしておくと、より元気になり、日々の生活の中でより快活な気分になれることが示されている。
研究チームが行なった4つの追跡調査で、たとえばプロポーズ、高価なプレゼント、試験の合格通知などのポジティブな秘密が人々を元気にすることが突き止められた。今は自分の胸の内に留めているポジティブな秘密をいつか明らかにすることを想像した時、気分が高揚するのである。
2500人の参加者を対象に行なった調査では、人々は平均して14~15個の良いニュースを持っており、そのうちの平均5~6個を周りの人に秘密にしている実態も判明した。
いくつかのポジティブな秘密を胸に秘めている〝リア充〟の人々も当然いそうだが、判明した実態に基づけば、そうした人々がポジティブな出来事をすぐにSNSなどで共有することはまずなさそうである。そしてこのような心の綾を理解していれば、私生活上のイベントを自ら明け透けに共有するSNS上の〝リア充〟のことが幸せそうには思えないとしても不思議ではない。
特にうれしい出来事や楽しいイベント、あるいは癒される体験などを一定間隔で味わっていなくとも、胸に秘めたこのような思いがあることで、幸せな人は日常の中で充実感を覚えている傾向もありそうだ。
そしてこの種の〝リア充〟の何気ない所作から滲み出る幸福感は他者にも如実に伝わってくるということかもしれない。他者と共有したり比較したりする必要のない充足感を1つでも多く、しみじみと味わいたいものである。
※研究論文
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/19485506231197844
文/仲田しんじ