定年退職前後の高強度トレーニングで老後も活動的に
定年退職が視野に入ってきたら、高強度の筋力トレーニングをしておくと良いかもしれない。それにより、身体的に自立した生活にとって重要な下肢の筋力が、退職後にも長期間維持されるという。
ウメオ大学(スウェーデン)のCarl-Johan Boraxbekk氏らの研究の結果であり、詳細は「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に6月18日掲載された。
筋力トレーニングによって、加齢による筋肉量や筋力の低下が抑制される。ただし筋力トレーニングを一定期間継続した後に、その効果がどれだけ長く維持されるのかという点はよく分かっていない。Boraxbekk氏らはこの点を検証するために、無作為化比較試験を実施した。
定年退職年齢に相当する高齢者451人を、ウエートを利用した高強度筋力トレーニング(HRT)を行う群、自重やレジスタンスバンドを利用した中強度筋力トレーニング(MIT)を行う群、筋力トレーニングは特に行わない対照群という3群に分けて1年間介入。最長4年間追跡して下肢の等尺性筋力、伸展筋力、握力、体組成などの変化を比較検討した。
4年間の追跡が可能だったのは369人で、ベースライン(介入前)における平均年齢は66.4±2.5歳、男性39%、BMI25.8±4.0、ウエスト周囲長92.7±11.5cmだった。1日の歩数は9,548±3,446歩でこの年齢層としては多く、活動的な集団と考えられた。ただし、参加者の約8割は一つ以上の慢性疾患に罹患していた。
4年後、MIT群(P=0.01)と対照群(P<0.001)では下肢の等尺性筋力が有意に低下していた。それに対してHRT群の変化は有意でなく(P=0.37)、筋力が維持されていた。伸展筋力と握力については3群ともに経時的に低下し、群間差は認められなかった。
体組成に関しては、対照群は4年間で内臓脂肪量が有意に増加していた(P=0.04)。それに対して筋力トレーニングを行った2群は、内臓脂肪量に有意な変化が見られなかった(P値はHRT群が1.00、MIT群は0.95)。除脂肪体重は、対照群(P=0.003)とMIT群(P<0.001)は有意に低下していたが、HRT群では有意な変化がなかった(P=0.81)。
Boraxbekk氏は、「この研究結果は、定年退職前後に高強度の筋力トレーニングを行うことが、その後の数年間にわたる長期的な効果をもたらす可能性があることを示している。高齢者に高強度の筋力トレーニングを推奨することで、より高齢になっても運動能力と自立性を維持しやすくなるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2024年6月19日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://bmjopensem.bmj.com/content/10/2/e001899
構成/DIME編集部