日本の株式市場の代表的指数として、東証株価指数 (TOPIX)と共に最も知られた存在である日経平均株価。これは東京証券取引所プライム市場に上場している約2000銘柄から、225銘柄を民間企業である日本経済新聞社が選定して算出するものだ。
日経平均、日経225(ニーニーゴ)とも呼ばれ、各種統計に加えて投資信託や先物取引などの商品にも利用されるほど広く普及しており、その動きは一般ニュースのトップで報じられることも多い。
そんな日経平均株価について、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩氏から分析リポートが届いたので、その概要をお伝えする。
日経平均の上昇基調回復には企業業績、企業改革、賃金の3点にさらなる進展の材料が必要
2024年の日経平均株価は1-3月期に20.6%上昇し、3月22日には取引時間中に一時4万1000円台をつけるなど、堅調に推移した。
しかしながら、4月に入るといったん調整色が強まり、日経平均は5月以降、おおむね3万7600円から3万9400円のレンジ内での推移が続き、4-6月期は6月25日まで3%の下落となっている。
そこで今回は、日経平均が上昇基調を回復するための条件について考えてみる。
これまで、日本株の先行きを展望するにあたり、注目しておきたい3つのポイントとして、「企業業績」、「企業改革」、「賃金」を挙げてきた。
これらは1-3月期にそろって改善傾向が確認されたため、日経平均は上昇。ただし4-6月期は目新しい動きがなかったため、上昇一服となったと考えている(図表1)。
したがって、日経平均が上昇基調を回復するには、この3つのポイントについて、さらなる進展の材料が必要となる。
■4-6月期決算で業績予想の改善期待が高まり、企業改革ではより質の高い開示が増える見通し
1つ目の企業業績について、企業自身による2024年度の業績予想は現在、総じてかなり控えめな内容となっている。
そのため、業績が日本株の買い材料となるには、業績予想の上方修正(少なくとも、その期待)が必要だ。そこで注目されるのは、7月下旬以降に本格化する3月期決算企業の4-6月期決算だ(図表2)。
足元の円安地合いもあり、まずまず良好な業績の走りが確認され、業績予想の上方修正期待が高まることも想定される。
2つ目の企業改革について、企業は2023年3月31日に東京証券取引所(以下、東証)から、資本コストや株価を意識した経営を要請されて以降、積極的にその取り組みと開示を行なっている。
こうしたなか、東証は2024年2月1日、投資家が一定の評価をしている取り組みの事例を公表しており、企業がこの内容を踏まえ、投資家の視点から資本効率改善などに取り組めば、より質の高い開示が増えることが期待される。
■実質賃金はまもなくプラス転換、日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復し年末4万2200円へ
3つ目の賃金については、物価を考慮した実質賃金の動向が注目される。直近4月の実質賃金は前年同月比1.2%減と、25か月連続でマイナスとなっているが、弊社では2024春季生活闘争(春闘)の賃上げ効果により、実質賃金の前年同月比の伸びは7-9月期にプラスに転じる可能性が高いとみている。
実質賃金のプラス転換は、消費回復やデフレ脱却につながることから、株価には好材料といえる。
以上より、企業業績、企業改革、賃金の3つのポイントについては、さらなる進展の材料が7-9月期中にも確認される公算は大きいと思われる。
特に、企業改革や賃金に関する好材料は、日本企業や日本経済の構造変化の証左であり、企業業績の持続的な改善期待につながりやすく、海外投資家の日本株再評価の根拠になり得ると考えられる。
以上の要因から日経平均は7-9月期中に上昇基調を回復して、年末4万2200円の着地を予想している。
構成/清水眞希