スズキが「スイフト」という名のコンパクトカーを発売したのは2004年のこと。それまでのクルマ造りの手法を見直し、コスト重視ではなくクルマ本来の魅力(走る、曲がる、止まる)にお金をかけたクルマづくりを実施した。その結果、軽快なコンパクトカーが誕生した。初代「スイフト」はたちまち人気車種になり、スズキは軽自動車だけでなく、小型車の分野でも認知されるようになった。
初代がデビューしてから約20年、5代目が2023年12月に発表された。ボディーバリエーションは5ドアハッチバックのみ。サイズは全幅を1.6m以下に抑え、5ナンバーサイズをキープ。グレードはXG/ハイブリッドMX/ハイブリッドMZの3グレード。XGはガソリン1.2Lエンジン。他は1.2Lガソリン+モーター。変速方式はCVTガソリン。ハイブリッドMXにだけ5速マニュアルが用意されている。駆動は4WDと2WD(FF)が全グレードに用意されている。車両本体価格はXGのFF車が172万7000円で最廉価モデル、ハイブリッドMZの4WDが最高額で233万2000円だ。
スポーツ魂を感じさせる、やや重めの操舵力と路面からの細かい上下動
試乗したのは、ハイブリッドMZのFF車。パワーユニットは直3、1.2L、82PS、108Nmと、3.1PS、60Nmのモーターを搭載している。3気筒エンジンは今回新たに開発されたエンジンで、高効率と低回転から滑らかに吹け上がるトルク特性を与えられており、燃費も当然、向上している。
CVTはフロアからシフトレバーが生えており、P/R/N/D・Mの4ポジション。パドルレバーもあり、7速を使い分けることができる。7速をマニュアルシフトすると1速50、2速65、3速75、4速95km/に達する。一方、街中では7速1500回転でも走行することができ、そこからの加速も可能。2000回転をオーバーするとアクセルレスポンスが向上する。
街中ではやや重めの操舵力と、路面からの細かい上下動が「スイフト」のスポーツ魂を感じさせる。ボディーの接合部に減衰接着材を塗布し、バッフル材の追加やダッシュパネルの板厚を増すなどで、エンジン音やロードノイズは、先代よりも低減している。
コーナーではハンドルを切り込んだ時の動きがシャープになった。ボディーの傾きも抑えられている。これはスタビライザーの仕様を変更し、リアサスのストローク量をコントロールしたことで実現した。こう書くと、今回の「スイフト」もスポーツ性を重視したコンパクトカーと思うかもしれない。それはある意味、正解だが、新型「スイフト」は乗りやすさと軽快感が開発目標だった。
というのも、先代までの「スイフト」は、スポーティーなイメージで、40代以下の走り好きなユーザーが多かった。他のコンパクトカーと比較すると、購入者の平均年齢は他社よりも10歳も若かった。ところが、スポーティーなイメージが強いことで、女性ユーザーやビギナーが「そんな高性能車は必要ない」と敬遠するケースが増えてきたという。そこで、新型はマイルドな路線を強調したクルマ造りに力を注いだというわけだ。