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「アファーマティブアクション」は、人種や性別などにより不利益を受ける人々に対する差別を是正するための積極的な取り組みを意味する。差別を解消するための取り組みではあるものの、一方で批判的な意見があるのも事実だ。
本記事では、アファーマティブアクションの意味や具体例などを解説する。国内や海外それぞれでの取り組み、アファーマティブアクションの問題点なども紹介する。ぜひこの機会に確認しておこう。
アファーマティブアクションの意味や具体例
まずはアファーマティブアクションの意味や言葉が生まれた背景、具体例などを簡単に確認しよう。
■差別を解消するための取り組み
アファーマティブアクション(Affirmative Action)は、集団や個人間での不平等や差別を是正するための措置を指す。積極的差別解消策、積極的差別是正措置などとも訳される。
目的は、社会的弱者とされる不利な立場にある人々に平等な機会を提供すること。全員が公平なスタートラインに立てるよう、教育や雇用などの分野で導入されている。
■アファーマティブアクションが生まれた背景
アファーマティブアクションは、アメリカで1961年に生まれた言葉。
当時の大統領ジョン・F・ケネディ氏が雇用機会均等委員会を設立し、連邦政府との契約がある企業に、人種や、宗教、肌の色、国籍、性別に関係なく雇用者を扱う積極的な行動(アファーマティブアクション)をとることを求めた。
1964年に差別を禁止する公民権法が制定されてからは、より広い範囲で雇用差別を禁じられる動きが取られるようになった。
■アファーマティブアクションが取られる主なシーンと手段
アファーマティブアクションは当初、雇用関連で導入されることが多くあったが、徐々に大学入試など教育のシーンまで広がった。
アファーマティブアクションで主に取られる手段は「クオーター制」と「ゴール・アンド・タイムテーブル方式」。クオータ制は、大学入試や企業の採用枠において、マイノリティに対し一定の人数や比率を割り当てる手法。
ゴール・アンド・タイムテーブル方式は、達成すべき目標(ゴール)とそれを達成するための期間の目安(タイムテーブル)を設定し、段階的に差別を是正していく方法だ。
アファーマティブアクションの事例
アメリカで生まれたアファーマティブアクションは現在、全世界で行われている。日本と海外の取り組みに分けて事例を見ていこう。
■日本の取り組み
日本では、主に女性の社会進出を支援するための施策としてアファーマティブアクションが導入されている。アファーマティブアクションと同義の「ポジティブアクション」が使われることが多く、男女間の雇用機会均等への取り組みが多く見られる。
例えば2003年に、男女共同参画推進本部において「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標が掲げられた。具体的な取り組みとしては、女性が活躍しやすい環境の整備、選考や人事考課における男女平等、女性リーダー向けの研修プログラムの実施などがある。
しかし、2024年現在も日本は諸外国と比べると女性管理職の割合が少ないなどの課題を抱えているのが現状だ。
■海外の取り組み
EUでは2022年、上場企業に対し、一定の比率で女性の取締役を登用することを義務付けた。2026年6月末までに、日常業務に携わらない社外取締役の40%以上、または全取締役の33%を女性が務める必要がある。2021年時点では、フランスの上場企業の取締役会に占める女性の比率が約45%にのぼっている。
スウェーデンでは1970年代から議会においてクオータ制が採用されており、女性議員の比率を高めるアファーマティブアクションが取られてきた。現在、女性議員の比率が平均43%と高い状況だ。さらに女性比率が50%を超える市議会も存在する。
賛否あり?アファーマティブアクションの問題点
最後に、アファーマティブアクションの懸念点を確認していこう。中には、アファーマティブアクションが廃止に至った事例もある。
■逆差別への懸念
マイノリティを優遇することで、マジョリティへの差別になるのではとの声が上がっている。
アメリカでは、大学入試試験において1960年代からアファーマティブアクションが取られてきた。1970年代から、大学入試におけるアファーマティブアクションが憲法違反か否かについて、何度も議論されてきた。2023年6月には、大学入試において人種を考慮することが、アメリカの連邦最高裁判所で憲法違反と判断されたのだ。
日本国内でも、大学入試で女性枠を設ける学校があることに対し、「憲法違反なのではないか」などの声が上がっている。
■個人の能力の軽視につながる
アファーマティブアクションとして多く取られる、特別に採用枠を設けるなどの手段は、個人の能力を軽視する恐れがあると指摘されている。
例えば入学試験において、全体の合格基準よりも、特別採用枠での合格基準が低くなった場合、個人の能力ではなく、人種や性別などで合否が判断されていることになるとの捉え方もできてしまう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部