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人間関係の構築や、ビジネスにおけるコミュニケーションでも、他者の意見を理解し共感することは欠かせない要素。この能力は「共感性」と呼ばれ、人間関係を円滑にする手段の一つとして不可欠なものだ。
本記事では「共感性」や、関連する語句「共感性羞恥」の意味などを解説する。共感性が高い人、低い人の特徴も併せてチェックしてほしい。
「共感性」とは?2種類の意味
共感性とは、他人の意見などに対して、その通りだと感じる能力をもつことを表す。広く認知されている言葉ではあるが、実は心理学的に2つに分類されることはあまり知られていない。
まずは、2種類の共感性について詳しく確認していこう。
■情動的共感性
情動的共感性とは、相手の感情を自分の感情として感じることを表す。
・悲しんでいる友人の話を聞いて、自分も悲しくなってもらい泣きをする
・友人の結婚が決まり、自分のことのように嬉しくて喜ぶ
このような例は、頭で考えることなく自然と引き起こされる共感だ。相手の感情に同化するように気持ちを共有するもので、一般的に「共感性」といえばこの情動的共感性をイメージすることが多い。
■認知的共感性
認知的共感性は、相手の発言や行動、周りの状況などの情報から判断して対象の人物の感情を理解することを表す。情動的共感性は頭で考えずに自然と気持ちが動くのに対して、認知的共感性は論理的思考から導かれる。
また、相手の気持ちを推察して理解するまでのプロセスを指すため、自身と対象の人物の感情に相違が生じる場合もある。
共感性羞恥とは
共感性に関連する語句で「共感性羞恥」という言葉を見聞きしたことがあるだろうか。
1987年に定義づけられた心理学用語であり、日本ではテレビ番組で取り上げられたことをきっかけに、SNSを中心に浸透した。読み方や意味について、詳しく確認していこう。
■読み方と意味
「共感性羞恥」は「きょうかんせいしゅうち」と読む。他者に共感する性質を指す「共感性」と、恥ずかしさを感じることを指す「羞恥」を合わせた言葉で、言葉の通り、相手に共感して自分が恥ずかしいと感じることを表している。
・フォーマルな席なのに場違いな服装で来て決まりが悪そうにしている人を見て、恥ずかしく思う
・街中で転んでしまい恥ずかしそうにしている人を見て、いたたまれなくなる
このように、ある人物が恥をかいている、恥ずかしいと思っている状況を見て、その感情に共感して自分も恥ずかしくなることを指す。
■「共感性羞恥」が誤用されている例
共感性羞恥は、若い世代を中心にSNSで多用されているが、誤用されているケースも多い。本来の意味ではなく、「見ているこちらが恥ずかしくなる」という意味合いや、単なる不快感や嫌悪感を表現する際にも使われている。
・奇抜なファッションの人を見て、共感性羞恥を感じる
・陳腐な詩を堂々と発信しているのを見て、共感性羞恥を覚える
このように、対象となる人物が恥ずかしいと思っていないのであれば、仮に自分が恥ずかしさを感じたとしても共感が生まれていない。そのため、この場合に感じた恥ずかしさは共感性羞恥とは異なるものだ。
こういった「自分だったら恥ずかしい」という想像による羞恥感情や、他者が恥をさらしていることに対する嫌悪感を共感性羞恥と混同した誤用が多い。
「共感性」は人間関係やビジネスでも重要
共感性は、円滑な人間関係の構築やチームワークの向上などに役立ち、日常生活やビジネスにおいて重要な役割を果たす。共感性が高い人、低い人の具体的な特徴を理解して自分の行いや思考を振り返るとともに、共感性を高める方法を学んでいこう。
■共感性が高い人の特徴
共感性が高い人の具体的な特徴は以下の通り。
・人への関心が強い
・相手の話をしっかりと聞く
・人生経験を積んでいる
・自分とは異なる意見でも受け止める
共感性の高い人は他者への関心が強く、それ故に人の言動や表情、声のトーンなどをよく見ている。コミュニケーションの基本である傾聴を得意としており、話を聞く間にも相手の様子を観察し、感情や意図を汲もうと考えを巡らせている。
さまざまな経験を積み、引き出しが多いため、自身の経験や過去に対峙した人物を回顧するなどして相手に寄り添うことが得意。また、自分と違った意見でも一旦受け止めて理解を示せる点も特徴だ。
■共感性が低い人の特徴
共感性が低い人には、以下のような特徴が挙げられる。
・人に関心がない
・相手の気持ちを考えない
・自己中心的である
共感性が低い人は他者に関心がないため相手の気持ちにも興味がなく、自身の言動によって相手がどんな気持ちになるかも考えない。相手の意見を尊重する姿勢がなく、自分の考えを通そうとする自己中心的な面もある。
■共感性を高めるには
共感性を高めるためには、以下の点を意識して人と向き合おう。
・周囲の人に関心を持つ
・相手の気持ちを考える
・理解に努める
共感性を高めたいのであれば、他者に関心を持ち相手の気持ちを考えて尊重しよう。たとえ自分と違った意見であっても、理解を示すことを忘れてはならない。受容の姿勢を見せることで相手は安心し、心を開くため、より良い人間関係を構築できるはずだ。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部