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「大阪のおばちゃんことば」に学ぶ!方言ワークショップが密かに注目されている理由

2024.07.15

「大阪のおばちゃんことば」の研究について研究員の方にお話を伺ってみた

『「大阪のおばちゃんことば」を用いて小さな援助行動を促す、きっかけのデザイン』について、実際に開発・活動を行っている京都芸術大学大学院 芸術環境専攻 学際デザイン研究領域の研究員の青山さんと長谷川さんにお話を伺ってみた。

――今回実施されたワークショップの内容を教えてください。

本ワークショップは、2時間の集合ワークショップと、LINEでコミュニケーションをとりながら進める1週間のチャレンジワークショップの二部構成から成ります。

出典:「大阪のおばちゃんことば」を用いて小さな援助行動を促す、きっかけのデザイン|早川ゼミ|研究|学際デザイン研究領域|芸術環境専攻|京都芸術大学 通信制大学院 芸術研究科

本ワークショップでは、「大阪のおばちゃんことば」を体験・体感し、自分なりの「大阪のおばちゃんことば」を見つけることで、日常の援助行動が促進されることを目指します。

丁寧な足場かけを行い、理解と実行を促す「インストラクショナルデザイン」、場面や大阪のおばちゃんの心情理解が進むよう、大阪ネイティブの音声データの復唱、穴埋めしたセリフを掛け合う「演劇(ロールプレイ)」、定着・継続させるための「ゲーミフィケーション」などの要素を取り入れ、開発を行いました。

詳細についてはこちらを参照ください。

――ワークショップの目的は何でしょうか?

京都芸術大学大学院 芸術環境研究科 学際デザイン研究領域 22年度修士研究の一環として当該ワークショップを開発しました。当大学院は、社会の課題解決や新たな価値創造のために、過去を再考し、現在~未来を創造する「学際的思考」を、実践的に研究する場です。

私たちは、数多ある社会課題の中でも、ちょっとした声がけや援助行動が減ってきていることをメンバーの共通課題意識としてもっていたことから、「日常の小さな援助行動があふれる社会をつくりたい」という想いの元、「助ける」という行為に焦点をあて、小さな援助行動を促す「何か」を探求するための研究を行いました。

援助行動(向社会的行動)の中でも「小さな親切行動」は、ほぼ無意識のうちに行なっている些細な行動であり、研究対象として挙げられづらいことが先行研究でも指摘されています。

他方、一般書や世間的な印象では「大阪のおばちゃんは お節介」という特徴が広く認知されており、私たちはこの特徴点を学際的に紐解き、「大阪のおばちゃんことば」を活用することで、小さな援助行動を促すワークショップを開発しました。

――集合ワークショップ当日の様子や反響について教えてください。

英語の授業のように「大阪のおばちゃんことば」を復唱することで、イントネーションやテンションを体感したり、3コマ漫画の吹き出しを埋めるワークでは、「大阪のおばちゃんなら、聞いてないことまでたくさん話すよね」と吹き出しを追加する人も出るなど、大阪のおばちゃんの言動を楽しみながら追体験していました。

参加者からは「大阪のおばちゃんの行動を知り、周りの些細なことにも気が付くようになり、声がけしようと思えるようになった」「声をかけても良いんだと思えるようになった。」「グループでのミッションやコミュニケーションが刺激になり、行動することができた。」などの感想をいただきました。当初期待していた、参加者が「大阪のおばちゃんことば」を体験し、自分なりのことばを見つけ、日常の援助行動で使いこなすことを達成できていると捉えています。

またそれ以上に、大阪のおばちゃんがどのような行動を取るかを参加者が認識したり、大阪のおばちゃんマインド(言語的発想法)を獲得する片鱗も見られるなど、期待以上の効果も得られました。

当該ワークショップは2024年5月1日の日経MJ様にも取り上げていただきました。

――「大阪のおばちゃんことば」に着眼されたきっかけを教えてください。

大阪(関西)方言の特徴に関する先行研究では、1)小林・澤村(2014)「社会と言語活動の関係モデル」にて地域の社会環境が地域特有の具体的な言語活動として現れること、2)大阪(関西)方言は、ポジティブ・ポライトネス・ストラテジーを多く含む方言であること、が明らかとなっています。

先にも述べた通り、一般書や世間的な印象では「大阪のおばちゃんは お節介」という特徴が広く認知されており、その特徴が表出する方言を役割語の概念を参考にしながら「大阪のおばちゃんことば」として抽出を行いました。

1)小林 隆, 澤村 美幸『ものの言いかた西東』岩波書店、 2014
2)吉岡泰夫「コミュニケーション意識と敬語行動にみるポライトネスの地域差・世代差 : 首都圏と大阪のネイティブ話者比較」『社会言語学』第7巻1号、2004年、pp.92-104

――「大阪のおばちゃんことば」の研究について、今後の予定や展望を教えてください。

大阪万博でのTeam Expo共創チャレンジに登録しており、当該フィールドにて万博や関連イベントでのボランティアを行う方や自治体の方向けにワークショップの開催ができればと考えております。

現在は私たち研究員での運営となっていますが、より安定的に幅広く利用いただけるよう、運営形態についても検討を行っています。

並行して、研究の側面においては方言学の領域やワークショップデザインの領域など、学際的な取組みらしい、様々な領域、切り口での研究を続けていきたいと考えています。

「大阪のおばちゃんことば」で社会行動が変わる、かもしれない

「大阪のおばちゃんことば」から大阪のおばちゃんマインドを学ぶ、ユニークなワークショップを紹介した。

方言によってそのキャラクターを模倣することで、それまで自分の中に無かった行動原理が生まれ、キャラクターに沿ったコミュニケーション手段がとれるまでに発展するというのは面白い発見だ。改めて考えると、大阪のおばちゃんに限らず例えば「沖縄のおばぁ」や「薩摩隼人」、「秋田美人」や「名古屋嬢」のように、聞くだけでキャラクターが連想される地域や方言というのは案外多い。

今回紹介した「大阪のおばちゃんことば」のように、今後日本各地の様々な方言が人の社会行動を変える引き金として活かされるようになる。そんな日が来ることもあるかもしれない。

取材協力/京都芸術大学 大学院 芸術環境専攻 学際デザイン研究領域 早川ゼミCチーム
参考サイト1
参考サイト2

参考サイト3

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取材・文/黒岩ヨシコ
編集/inox.

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