その老眼、実は緑内障かも?
「かくれ老眼もそうですが、〝老眼〟という単語のせいで自覚症状はあるのに老眼を認めたがらない人も存在します」
眼科医の梶原一人氏は、トークセッションでそう語った。
いわゆる老眼とは、水晶体の硬化が引き起こすものだ。これは加齢によるものなので、避けようがない。30代後半に達したら、とりあえず眼鏡店に行くのがいいという。
「老眼の自覚症状があるのにそれを我慢する行為は、老眼ではない他の病気の見落としにもなります。中には老眼かと思ったら実は緑内障だった、という人もいます」
「もしかして、自分は老眼なのか?」と思っても「老眼なんて格好悪い!」という思考が勝ってしまい、そのまま何もせずにしておくと、実はそれが老眼よりも遥かに深刻な眼病だった……ということもあるそうだ。特に緑内障は、治療の遅れが最悪失明につながる。このあたりは、人間ドックに通って癌を早期発見するのと同じ流れである。
早いうちから遠近両用メガネを!
老眼鏡をかけることに抵抗を持つ人は少なくないだろう。日本語では「眼鏡」と「老眼鏡」はしっかり区別されてしまっている点も、老眼を我慢してしまう人を増やす原因になっている。
しかし、最近では遠近両用メガネのファッショナブル化が影響し、言葉よりも先に製品自体の垣根がなくなりつつある。その上で梶原氏は、「メガネの常備」の重要性を説く。
「やはり、メガネを1本用意しておくことが大事です。もしも災害が発生した場合、ワンデイコンタクトレンズしかない……ということは避けなければなりません」
が、それでも「俺はまだまだ老眼じゃないんだ!」と主張する、諦めの悪い人もいるかもしれない。そうした人に待ち構えているのが、「遠近両用メガネに慣れるための訓練」である。
というのも、同じ老眼でも若年の頃に遠近両用メガネをつけるのと、それがかなり進行した年頃につけるのとでは「慣れのハードル」が段違いなのだ。
これを体験するため、次のような実験が開催された。まずは度の強いレンズを入れた試着用メガネを顔にかける。これは老眼が進行した人に最適の度数というが、遠近両用メガネを欠けたことのない筆者が装着すると視界がグラグラしてしまう。遠くのものもぼやけている。しかし、老眼の症状がまだ軽い人に向けたレンズ(なおかつ装着者個々の視力に合わせた度数のレンズ)に差し替えると、ピントがバッチリ合っている。
つまり、30代から初老にかけての時期に常に遠近両用メガネを着用していた人は、老眼の進行に合わせて強い度数のメガネに買い換えたとしてもスムーズに対応できるのだ。そうした「慣れ」をまったく踏まえてないと、のちのち「遠近両用メガネの適応に難儀する」ということになってしまう。
老眼を自覚しなかったり、自覚してもそれを無視し続けることは「百害あって一利なし」。ここは素直に「自分は老眼かもしれない」ということを認め、それに合わせた対策を施すべきだろう。
取材・文/澤田真一