3. 損益通算に関する特殊な取り扱い
以下の所得・損失については、損益通算に関して通常とは異なるルールが適用される点に注意が必要です。
(1)株式等の譲渡所得と利子所得・配当所得
(2)先物取引に係る雑所得等|FX取引・CFD取引など
(3)土地建物等の譲渡損失
3-1. 株式等の譲渡所得・利子所得・配当所得
株式等の譲渡所得(=売却益・売却損)については、原則として他の各種所得との間で損益通算をすることが認められません。
(例)
上場株式を売って生じた10万円の損失を、事業所得から控除することはできない。
ただし、上場株式等の譲渡所得と上場株式の利子所得(=投資信託の分配金など)または配当所得(=株式の配当金など)の間では、同一年度の確定申告において損益通算をすることが認められています。
(例)
上場株式を売って生じた10万円の損失は、上場株式の配当金として得た40万円の配当所得から控除することができる。
参考:No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い|国税庁
3-2. 先物取引に係る雑所得等|FX取引・CFD取引など
先物取引(FX・CFD・バイナリーオプションなどを含む)に係る事業所得・譲渡所得・雑所得(=先物取引に係る雑所得等)の計算上生じた損失の金額は、他の先物取引に係る雑所得等との間で損益通算をすることができます。
(例)
FX取引によって生じた10万円の損失は、CFD取引によって得た40万円の所得から控除することができる。
その一方で、先物取引に係る雑所得等と他の所得の間で損益通算をすることはできません。
(例)
金(ゴールド)の先物取引によって生じた10万円の損失を、事業所得から控除することはできない。
参考:No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例|国税庁
3-3. 土地建物等の譲渡損失
土地建物等の譲渡損失については、原則として他の所得の間で損益通算をすることはできません。
(例)
収益不動産を譲渡した際に生じた100万円の損失を、事業所得から控除することはできない。
ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡所得については、例外的に他の所得との損益通算が認められています。
(例)
住んでいた家の土地・建物を譲渡した際に生じた100万円の損失は、一定の要件を満たす場合に限り、事業所得から控除することができる。
参考:No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合|国税庁
参考:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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