気象庁が発表した、2024年6 ー8月の3か月予報によると、今年の夏は暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高くなる予想だ。
そんな厳しい暑さが予想される中、特に太りやすい人にとって注意が必要なのが、「基礎代謝量の低下」による「夏太り」。基礎代謝量が低いと脂肪が蓄積しやすくなるため、肥満の原因となるからだ。
なぜ盛夏で「夏太り」してしまうのか、原因は基礎代謝量の低下
一見、暑さによる発汗などから、代謝がよくなるイメージがある夏だが、実は冬に比べて基礎代謝量が低下すると言われている。
さらに、冷たいものの取りすぎや、クーラーによる冷えなど、夏の食生活による「腸冷え」などの腸内環境の乱れが、基礎代謝量を低下させる原因にもなるという。
というわけで、腸内環境を整える食生活から夏太り対策という観点から、慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授・福田真嗣先生の監修による関連リポートが届いたので、その概要をお伝えする。
その中では基礎代謝量を上げるポイントとして、近年注目されている〝タンサ(短鎖)脂肪酸〟にも言及しているので、併せてチェックしていただきたい。
■「基礎代謝量」とは何か
体温の維持や、内臓の機能など、私たちが生命活動を維持するために最低限必要なエネルギーを数値化したものを基礎代謝量という。
基礎代謝量は年齢や性別、体格などのほか、運動習慣やホルモンなど様々な因子の影響を受け一人ひとり異なっている。
外気温が低い冬は、カラダを温めて体温を維持しようと基礎代謝量がアップ。一方で、外気温が高い夏には、基礎代謝量は冬よりも低下してしまうと言われている。
■「夏太り」につながりやすい、生活習慣や食事
夏の暑さによる活動量の低下や食生活・自律神経の乱れが肥満につながるだけでなく、カラダを冷やし、筋力を低下させて基礎代謝量をさらに下げることにつながるケースも考えられる。以下の項目には要注意だ。
・冷たいものを取りすぎたり、クーラーで部屋を冷やしすぎたりすることによる「カラダの冷え」
・暑さで「カラダを動かす機会の減少」
・食生活が偏ることなどによる「腸内環境の乱れ」
腸から太りにくいカラダをつくるカギは“短鎖脂肪酸”
基礎代謝量を向上させるには、カラダを冷やさないようにしたり、トレーニング等で筋肉量をあげたりすることも大切ですが、食生活の面からのアプローチも重要になる。
そこでポイントとなるのが、腸内環境を整え、カラダづくりをサポートしてくれるのが「短鎖脂肪酸」。
この「短鎖脂肪酸」とはビフィズス菌などの腸内細菌が、水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにして作り出す物質だ。近年の研究で、基礎代謝量の向上、内臓脂肪・体脂肪の低減などの抗肥満作用をはじめ、免疫機能や持久力アップなどの健康をサポートする効果があることが明らかになっている。
つまり、「短鎖脂肪酸」を増やす食生活を行なうことが、基礎代謝量を向上させ、「夏太り」を防ぐことにもつながるというわけだ。
■短鎖脂肪酸を増やすにはどのような食事が有効なのか
腸内環境を整え、太りにくい体質をつくるためには腸内細菌に短鎖脂肪酸をつくってもらうことが大切。そのために意識したいのが、“腸内細菌のエサ”だ。
「短鎖脂肪酸をたくさん産生できる理想的な腸内フローラ(腸内細菌叢)を目指すためには、ビフィズス菌や酪酸産生菌などをはじめ、さまざまな種類の腸内細菌が腸内にいる状態をつくることと、それらのエサになる食物繊維が豊富に含まれる食材や素材を継続的に摂取していくことがカギになります」(福田先生)
野菜や果物、きのこなどに含まれる食物繊維が大腸に届くと、腸内細菌のエサとなり短鎖脂肪酸が作られる。特に、チコリやごぼうなどに多く含まれるイヌリンや、バナナなどに多く含まれているフラクトオリゴ糖などの水溶性食物繊維やオリゴ糖が、短鎖脂肪酸の産生に有効だという。
「基礎代謝量を高めるためには、筋トレやストレッチ、有酸素運動などの運動習慣も大切ですが、夏は日常的に運動を継続するハードルが高い季節でもありますよね。まずは、日々の食事を、短鎖脂肪酸をキーワードに見直してみるのもおすすめです」(福田先生)
資料監修/福田真嗣先生
博士(農学)慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。世界から注目を集める「腸内環境」の最先端研究を行う。株式会社メタジェン代表取締役社長CEO。
明治大学大学院農学研究科を卒業後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、現在は慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授。複数の論文が世界的な学術雑誌「Nature」に掲載される。腸内環境を適切にデザインすることで病気ゼロ社会を実現するため、2015年株式会社メタジェンを設立。
関連情報
https://cp.glico.com/tansa/
構成/清水眞希