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長崎県「軍艦島」を3Dデータ化!HERITAGE DATABANKが広げる世界遺産の保全と活用の可能性【PR】

2024.06.27PR

電通では、世界遺産をはじめとする貴重な⾃然や⽂化を3Dデータ化して保存し、さまざまな企業・団体とともにそのデータを活⽤することで、当該資産の保全活動に還元していくプロジェクト「HERITAGE DATABANK(ヘリテージ・データバンク)」を始動した。これは、デジタルアーカイブというテクノロジーで世界の資産の社会価値と活用可能性を広げ、保全を継続していく試みだ。

プロジェクトの第一弾として、⻑崎県⻑崎市の世界遺産・軍艦島を3Dデータ化。本記事ではその事例とともに、「HERITAGE DATABANK」始動の背景やその意義、保全と活用を両立する今後の展開などについて、プロジェクトを主導したHERITAGE DATABANKのメンバーが伝える。

小西 慶さん
株式会社 電通
ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター コピーライター

家泉 洋平さん
株式会社 電通
第2ビジネス・トランスフォーメーション局  ビジネスデザイナー

諸星 智也さん
株式会社 電通
第1CRプランニング局 クリエーティブ・テクノロジスト / プランナー

吉森 太助さん
株式会社 電通
第1CRプランニング局 アートディレクター・デザイナー

世界遺産が抱える保全の課題に、テクノロジーとクリエイティブで新しいアプローチを

世界遺産をはじめとする、貴重な資産の数々には、その素晴らしい姿の「保全」を継続的に行っていく上での大きな課題があります。そこには、自然災害や武力紛争、オーバーツーリズムに伴う破壊や摩耗など、さまざまな理由が存在し、保全や維持のための費用も足りていないのが現状です。

そんな中で注目されているのが、デジタルアーカイブという手法。これは貴重な資産を3Dスキャンによってデータ化し、デジタル上で保存していくという取り組みです。すでに取り組んでいる自治体もありますが、実施するためにはリアルの保全と同様に多額の費用が発生してしまいます。

そこで、電通のプロジェクト「HERITAGE DATABANK」で取り組みを始めたのが、デジタルアーカイブとクリエイティブデザインを掛け合わせた、「保全」と「収益化」を両立するエコシステムの構築です。貴重な資産を3Dデータとしてデジタル上に保存することに加えて、その3Dデータを観光やエンタメ・ゲーム、教育・研究など、さまざまな用途で活用し、保全活動をマネタイズしていくことを目指しています。

プロジェクトメンバーの小西は、大学時代に軍艦島の劣化研究を行っており、その中で世界遺産保全の課題を痛感していました。ただ予算をかけて保全していくだけでなく、新たな価値を生み出せるような方法で保全ができないかと考えたのが、本プロジェクトのきっかけでもありました。

長崎市とともに“9割立ち入り禁止”の世界遺産・軍艦島を完全3Dデータ化

プロジェクトの第1弾は、地理的・技術的理由から保全が困難とされる長崎市の軍艦島でした。明治日本の産業革命遺産の構成資産として世界遺産に登録されており、密集した建物群がつくる軍艦のような景観が魅力で日本国内のみならず、海外からの観光客にも人気のスポットです。

しかし、一部上陸見学ルートがあるものの、波が高いなど海の天候によって上陸できない日が多く発生しており、アクセスは容易ではありません。さらにその建物群は現在進行形で劣化が続いているため、島の9割が立ち入り禁止エリアとなっています。

そのため軍艦島は、研究・学術目的などでしか立ち入り禁止エリアへの上陸許可が下りず、また、許可を得られたとしても1、2日間が限度となるのが通例です。こうした状況の中で、今回HERITAGE DATABANKは、デジタルアーカイブと保全活動の一環として、長崎市全面協力のもと、軍艦島の大規模な3Dスキャンを実施することができました。

デジタルアーカイブに使用する技術は「フォトグラメトリー」というもので、被写体をさまざまなアングルから撮影して、そのデジタル画像を解析、統合し立体的な3DCGモデルを作成する手法です。

私たちも世界有数の3Dスキャンチームとともに、9割が立ち入り禁止の軍艦島に2週間ほど上陸し、長崎市職員の方のガイドに従い、危険な地域を除いて、建物から瓦礫に至るまで島の隅々にわたり記録しました。一部の安全な建物においては内部にまで足を踏み入れ、当時の生活が感じられる住居や学校の教室、体育館などもスキャンしました。

長崎市職員の方からは「1週間前まではまだこの壁は残っていた」「半年前、この建物の最上階が崩れてしまった」「なかなか全てを保護することは難しい」といった軍艦島の保全の実情について、実物を見ながら教えてもらうことができました。

実際に崩壊が進む軍艦島の建物を遠くから眺めるだけではなく、足を踏み入れられたこと、職員の方のお話を聞いたことで、より一層、このプロジェクトのミッションと必要性を感じられました。

データ化で終わらず、アーカイブデータの可能性に挑戦した「渋⾕軍艦島展」を開催!

軍艦島閉山から50年を迎える2024年1月には、軍艦島のアーカイブデータを活用した企画展「渋谷軍艦島展」を実施しました。デジタルアーカイブとクリエイティブを掛け合わせることで、データをさまざまな表現に昇華させ、カルチャーの中心地である渋谷から、アーカイブデータの新たな可能性を発信しました。

※渋谷軍艦島展では3つの表現を展示。

「バーチャル軍艦島写真展」

目玉となったのは、写真家・佐藤健寿氏によって撮影された世界初のバーチャル軍艦島写真の展示です。

TBS系「クレイジージャーニー」などへも出演する佐藤氏は、世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点からの撮影を行い、著書に写真集「奇界遺産」シリーズがあります。

佐藤氏は、2018年に軍艦島の写真集「THE ISLAND 軍艦島」の撮影をしましたが、当時「このアングル、この場所から撮りたい」と思っても、建物が密集していたり、そもそも崩壊の危険があり入れなかったりして断念した構図が多くあったといいます。

今回、軍艦島全土の3Dデータを、Think & Craftが開発したバーチャル写真撮影システムに取り込むことで、そうした、実際の撮影環境では難しいバーチャルならではの視点で切り取ったアングルが可能になりました。さらに、システム上でシミュレーションすることによって時間帯や天気を自由に設定でき、通常は上陸できない早朝や夜の軍艦島を再現して、現実世界では撮影不可能な、写真表現に挑戦しました。

佐藤氏はこの手法を「撮像(さつぞう)」と呼んでいます。

撮影後の佐藤氏からはこの新たな体験に対して「過去に何度か上陸した軍艦島に、今回は全く新しい方法で“上陸”した。廃墟となった荘厳なビルの隙間からあふれる光、時間の移ろいで変わる島の独特の陰影。画面を見つめながら島を“歩く”うち、島の記憶がフラッシュバックして、眼前のリアルな光景に没入した。それは懐かしくもあり、同時に新しい、未知の体験だった」というコメントが届きました。

「バーチャル軍艦島解剖展」

1960年代当時、世界一の人口密度を誇った軍艦島は、非常に多くの建物が密集しています。

そこで3Dデータの利点を生かし、軍艦島に現存する歴史的な建築群の一棟一棟を、切り出して展示することで、今までにない軍艦島建造物の表現を実現しました。日本最古の鉄筋コンクリート造りのアパートをはじめ、劣化が進む軍艦島の「今」を記録しています。

「バーチャル軍艦島上陸展」

佐藤健寿氏が実際に撮影に使用したバーチャル軍艦島の撮影・探索コンテンツを一般の方にも体験していただく企画です。

操作はドローンの感覚に近く、コントローラーを用いて自分の位置や視点を動かし、ズーム・露光・ホワイトバランス・シャッターなどを組み込んだカメラの機能も活用することができます。これにより、軍艦島の立ち入り禁止区域に足を踏み入れて、自分だけの軍艦島をバーチャル写真で記録・印刷できる体験としました。

今回の渋谷軍艦島展では、全く告知をしておらず、どれだけの人が来ていただけるか不安だったのですが、最終的には5日間で1000人以上の方が訪れ、複数のメディアにも取り上げていただけました。

意外だったのは、来場者の方で「これから軍艦島に行くんです」といった「下見」のニーズに加え、「軍艦島に行ったものの、立ち入り禁止エリアも見たくなった」という「後見」のニーズがあったことです。

他にも、佐藤氏のファンの方はもちろん、3Dスキャンやフォトグラメトリー、Web3、XRなどの技術に興味のある方、バーチャルロケ撮影・ロケハンなどクリエイティブ制作面での活用を考えている方、自治体・世界遺産管理関係の方など、幅広い目的をもった来場者が訪れ、この領域の可能性を改めて感じました。

また、長崎市長の鈴木史朗氏も来場され、「デジタルの技術で軍艦島の価値を未来に残していく有意義な取り組み」と、プロジェクトへの共感を示してくださいました。

長崎市では渋谷軍艦島展の後に、「軍艦島資料館」「グラバー園」で巡回展が開催され、現地・長崎県の皆さんから好評の声を聞くことができました。私たちもこのプロジェクトの意義を感じることができ、とても得難い体験となりました。

軍艦島データの新たな活用も実現。保全と活用が両立するモデルケースに

現在は、さまざまな企業とともに、アーカイブデータのコンテンツ活用に向けての取り組みを進めています。長崎市にある軍艦島デジタルミュージアムでは、新設された立体シアター内の3D映像にデータを活用してもらいました。

また、東北新社、電通クリエーティブX、電通クリエーティブキューブ、ヒビノ、オムニバス・ジャパンが取り組む共同プロジェクト「メタバース プロダクション」でも活用されています。

■  メタバース プロダクションの関連記事はこちら
「テクノロジーが描く、映像制作×サステナビリティの未来」

「メタバース プロダクション」では、インカメラVFXを使用し、背面のLEDディスプレーに3Dデータを表示することで、現地に行かなくてもまるでその場にいるような表現での撮影が可能になります。そこから、映像制作における温室効果ガス削減とプロセス効率化が期待されています。

今回、制作した軍艦島3DデータをLEDディスプレーに表示する背景アセットとして活用(リリースはこちら)することで、電通グループでの連携も進めています。

既に複数の世界遺産や観光施設から撮影許諾がおりていたり、各地方自治体の皆さまから問い合わせもいただいたりしています。また旅行・観光、XR・Web3、ゲーム・エンターテインメント分野の各企業との取り組みも進んでいます。

本プロジェクトは、まだまだはじまったばかりです。

今回の軍艦島での事例をモデルケースにしながら、デジタルアーカイブによる保全と、データ活用による認知拡大・観光誘致を同時に行えるソリューションとして、今後も他の世界遺産や文化財、そして世界の資産へとその輪を広げていきたいと考えています。

※こちらの記事はウェブ電通報からの転載記事になります

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