AIがコミュニケーションを担う存在に
■洋服を購入する一歩手前のコミュニケーションツールとしてAIが活躍
実店舗である「niaulab」での「似合う」の知見やノウハウが、消費者とECサイト「ZOZOTOWN」をつなぐタッチポイントとして、今後一役買うことになるという。
「この取り組みにおけるファッションテックとは、ZOZOSUITやZOZOMATといった物理的なツールとしてではなく、データベースを使ってお客様の洋服選びをサポートするもの。お客様がコーディネートに悩んだり、自分自身の『似合う』を探したりするといった、洋服を購入する一歩手前に生まれる感情やコミュニケーションに寄り添う役割をAIが担っていくんです」
■「niaulab」の体験後、ZOZOTOWNでの購入金額が2倍に
店舗でアイテムの購入は出来ないものの、 「niaulab」体験者が体験後にECサイト「ZOZOTOWN」で購入した金額は約2倍に増加。「ZOZOTOWN」への訪問頻度も約1.5倍に増えたという。また、体験者の96.6%が「似合うものが見つかった」と回答している。
ZOZOが見据える、ファッションテックの未来
■最先端のテクノロジーで消費者の声に寄り添う
ZOZOが実施した「ファッションに関する意識調査」によると82%の方が「自分に似合うファッションがわからない」「ファッションがいつも無難・保守的になる」という悩みを抱えていることがわかった。
「多くの方がただ洋服が欲しいわけではなくて『自分に似合う服を着たい』と感じている。洋服を買う一歩手前の悩みに寄り添うツールとしてAIを進化させていくことで、より多くのお客様のニーズを満たせると考えています。さらに『似合う』のセオリーを追求して、新たなファッションの楽しみ方を提案していきたいですね」
■ファッションに対して苦手意識を感じている人もファッションを楽しめる世界を作る
大久保さんは、さらにこんな展望を語ってくれた。
「洋服を購入する際に、オンライン上で簡単にアクセスできてたくさんの洋服をチェックできる『ZOZOTOWN』はやはり便利なツールだと思うんです。しかし、『似合う』がわからないがために、ファッションへ苦手意識を感じている方も少なくない。一人ひとりの『似合う』を見つけていくために、よりパーソナライズの精度を高めていって、オンライン上でも一人ひとりの『似合う』を見つけることで、もっと気軽にファッションを楽しめる世界を目指していきたいです」
ファッションテックの急速な発展によって、トレンドの情報へ簡単にアクセスできたり、ECサイトで気軽に洋服を探せたりするようになった。しかし、自分にとっての「似合う」を見つけることは意外にも難しい。そんな一人ひとりの悩みや心情にAIが寄り添うサービスに注目が集まっているのは、ファッションテックの分野において、これまでになかった体験価値を生んでいるからに違いない。
取材・文/山本菜美子
1997年生まれ。フリーエディター、ライター。主な執筆分野はファッションやアート。