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なぜ「悲報」は注目を集めやすいのか?悲しいニュースがメンタルの安定につながる理由

2024.06.21

ネガティブな感情が喜びを生み出す可能性

特にコロナ禍中のある種のニュースは人に懸念や不安、あるいは恐怖さえ引き起こしたかもしれない。または国内外を問わず〝迷惑系〟動画配信者の愚行のニュースは多くを憤慨させたりもするだろう。

しかしそうしたインパクトの強いニュースよりも、なおいっそう【悲報】が注目を集めていることが今回の研究で明らかになった。悲しみは人の同情を集めやすいということなのだろうか。

華々しくオープンを飾る商業施設が話題になる一方、惜しまれて店を閉める店舗やデパートの話題もニュースになるが、人々の注目と同情は閉店のニュースの方により注がれているような感もある。特にそれが老舗百貨店であったり、高齢の店主の飲食店であった場合などはなおさらだ。こうした閉店の話題もまたニュース的には【悲報】であり、往々にして時間をかけて取材したドキュメンタリー報道になっていたりもする。

そしてある意味では定番的な【悲報】である有名人の訃報も多くの注目を集めるニュースとなるだろう。特に昨年はミュージシャンをはじめ多くの有名人の訃報が続き、間を置かずに世は驚きと悲しみに包まれたことも記憶に新しい。

また【悲報】に注目が集まる理由として「カタルシス効果」も挙げられる。カタルシスとは、哲学および心理学において精神の「浄化」を意味しており、この場合は、知らずに自分の中で鬱積していた悲しみが【悲報】に触れることで一時の深い悲哀と共に解放され洗い流される体験となる。

ということは【悲報】に触れることは他者の不幸や無念さに同情するだけでなく、自分のメンタルの安定のための利己的な側面もあることになる。これは〝泣けるドラマ〟を好む心理に通じるものがあるのだろう。

そしてこれは映画やドラマだけではなく、音楽についても当てはまるようだ。

豪ニュー・サウス・ウェールズ大学の研究者が今年4月に「PLOS ONE」で発表した研究では、悲しみを喚起する音楽を聴くときに感じるネガティブな感情が喜びを生み出す可能性があることを示唆している。

実験を通じて研究チームは感動することと悲しみを感じることには重複する側面があり、感動することは悲しみを引き起こし、悲しみが感動を引き起こしている可能性を示唆している。そして安全な環境において悲哀を体験することで喜びが得られるというのである。

安全な自宅や映画館でホラー映画を観賞して楽しむことにも相通ずるものがありそうで、そこには当然だが娯楽としての利己的要素が含まれている。

したがって悲しいニュースについ同情したくなるのは人情だが、そこには利己的な側面があることに自覚的であるべきだ。ネットで日々もたらされる【悲報】への注目も度が過ぎれば〝他人の不幸は蜜の味〟を体現する腹黒い人格にもなりかねない。そしてそもそもネットニュースを見過ぎていないかどうか、折に触れてセルフチェックしてみたいものだ。

※研究論文
https://www.nature.com/articles/s41562-023-01538-4

※参考記事
https://www.psypost.org/a-particular-type-of-language-boosts-online-news-consumption-study-suggests/

文/仲田しんじ

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