「合理的選択理論」を利用する防犯対策
そのようなことを書いていると、ちょうどテレビのニュース番組で光熱費上昇の話題が流れてきた。やはり、今シーズンは電気代高騰は避けられないようだ。政府の補助金が終了し、電気代がさらに家計を圧迫するようになる。
となると、避暑のために勝手口の窓を開け続けるという人はなおさら増える可能性がある。
泥棒が常に考える「合理的選択理論」に照らし合わせると、窓が開放されている勝手口のドアはまさに絶好条件。しかも、夜でなくとも日中に窓を開けたまま外出してしまう人も少なくないとか。
「泥棒は〝捕まりたくない〟ということを合理的に考えています。ですから、捕まりやすくなる仕掛けを作っていくと、彼ら自身がそれを避けていきます」(松本氏)
常に合理的に判断する泥棒に対して、こちらも合理的な手段をちらつかせて犯行を断念させる。衝動的な暴行や殺人はこちらが屈強な戦士でない限りは制止できないが、侵入窃盗犯は今風に言えばタイパ重視であることが多い。侵入に時間のかかる家を好んで狙う泥棒はいないだろう。
隣の家よりも万全な対策を
ここまで全3回に渡り、「戸建て住宅の防犯対策」についての話を山田氏と松本氏に伺った。
本当は、もっと様々な話もありそれらを全て書きたいところではあるが、残念ながらWebメディアでは紙が足りない。書籍として出版できるのではないかというほどのボリュームである。
最後に、外出時には必ずやっておきたい防犯対策を紹介したい。
木戸を施錠し、侵入犯を家屋の奥側に入れないことは絶対不可欠。窓はたとえ面格子があったとしても、必ず閉めた上で施錠もするべきだ。そして、庭にある脚立を片付けるか柵などにチェーン錠で固定する工夫も有効である。
侵入した先の家にある脚立で2階に上るということはやはりあるそうで、それゆえに庭に脚立を置きっ放しにしているというのはリスクを伴う行動だ。逆に言えば、泥棒に利用されそうなモノや要素をなくしていけば合理的判断で動く犯罪者は他の家を選ぶだろう。
やや誤解を招きそうな表現ではあるが、隣の家よりも万全な防犯対策を取らなければこちらが狙われてしまう。上述の勝手口も、同じ分譲地内の他の家よりも盤石の防犯対策を施しておけば泥棒は諦めざるを得ないのだ。
正しい方向性で知恵を巡らせれば、泥棒は勝手に逃げていく。
取材・文/澤田真一