前回は、侵入窃盗犯が常に合理的に判断すること、そして今からでもできる侵入阻止の対策についてデータを挙げながら解説した。
第2回に当たるこの記事では、「中部地方の特殊な住宅事情」に由来する現象を取り上げたい。数年前まで、中部地方では「戸建て住宅の正面から家宅侵入する」犯罪が非常に多かった。他の地方では、そうした傾向は一切見られない。愛知県に一体何があるのか?
今回も旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所 主任研究員の山田恭司氏(一級建築士)、同社顧問の松本吉彦氏に話を伺う。
中部地方だけ「正面突破型侵入犯」が多い!?
まずは、以下の画像資料をご覧いただきたい。
これは、前回の記事にも貼った「エリア(地域)ごとの侵入場所の違い」である。
どの地域でも、道路から見た家屋の背面が最も侵入経路に選ばれやすいことが明らかになっているが、なぜか中部地方だけは正面からの侵入が目立っている。というより、割合で家屋背面を越えてしまっている。
つまり、中部地方は「正面突破の家宅侵入」も多いのだ。
さらに「窃盗犯・侵入犯は常に合理的に判断する」と書いた。いかに人の目につかず、いかに効率よく金品を奪うか。つまり「報酬に見合った仕事量」をいつも計算し、報酬が少なくリスクが高いのであれば侵入を諦めてしまう。「くいとめ」と「みまもり」を組み合わせる話も、前回の記事で執筆した。
にもかかわらず、「正面突破」は近隣住民や通行人の目についてしまう悪手ではないのか?
正面突破の理由は「車社会」ゆえ!?
これに関して、山田氏はこう説明する。
「愛知県は、自動車メーカーのトヨタのお膝元で車社会です。従って、その周辺の地域の戸建て住宅は広めのカーポートがある場合が多いのです。侵入犯は、車を3台か4台駐車できるフリースペースに車を乗り上げて、車と建物正面の間に挟まる位置に隠れて玄関をバールで開ける……という手段が横行していたことがありました」
驚くべき内容である。広い駐車スペースを利用して、乗りつけた車で身を隠しながら玄関ドアを破壊する手口だ。カーポートに車があっても、それ自体は誰も不思議に思わない。
また、カーポートが広いと道路の左右どちら側にも逃走することができる。都合に応じて逃げる方向を決められるのだ。
「中部地方を始めとした、いわゆる〝車社会〟の地域にはこうした犯罪が発生する可能性があります」(山田氏)