2024年4月からDIMEにて連載が始まった「マンガでわかる生成AI」の原作を担当しており、アステリア株式会社、および生成AI協会(GAIS)でエバンジェリストを務めております森一弥です。
5月にはChatGPTの新しいモデル「GPT-4o」がリリースされたり、Google Geminiもバージョンアップしたりと話題に事欠かない生成AI界隈ですが、前回はリスクについてお話させていただきました。これだけ話題になっていると多くの会社で「ウチでもなにか活用できないのか?」と考えるのが普通ですよね? ということで、今回は生成AIを会社の業務で利用する際に使えるテクニックについて考えてみます。
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自社用にカスタマイズしたチャットツールを作りたい! その方法は?
ChatGPTや同等のサービスは多少の制限はあるものの無料から使うことのできるサービスが大半です。一度でも体験していれば、その流暢な日本語の返答を目にし、会社の業務の一部で使えるのではないか? と考えるのも無理はありません。
では具体的にどういったシーンで使うのか? 業種や業態によってその答えは多岐にわたると考えられますが、最も有力な候補として挙げられるのが「自社用にカスタマイズしたチャットツール」ではないでしょうか?
例えば自社製品のさまざまな情報を生成AIに「学習」してもらい、「自社製品のサポート窓口」として業務活用しようという発想です。もちろん社外からの問い合わせに関わらず、大きな会社であれば、会社の規定を学習させて社員が総務部門へ質問する際の問い合わせに利用したり、法務部門での一次受付の対応窓口にもなり得るでしょう。ある種の「ノウハウ」や「ナレッジ」をもとに回答する業務であれば、比較的簡単に実現できそうです。
このように、生成AIに社内情報を学習してもらう方法は複数存在しています。代表的なものから順にご紹介します。
「ファインチューニング」で追加学習
まず初めにご紹介するのは「ファインチューニング」という方法です。「追加学習」と呼ばれる場合もあります。
ChatGPTや同様のサービスの裏側には、サービス提供側が膨大なデータを学習させた「大規模言語モデル」というものが存在します。主にインターネット上の情報を学習させたモデルが存在することで、多くの質問に回答することができていますが、学習が終わってから起きた事象や、モデルが完成した時点で学習していない事柄には答えられません。
そこで、このモデルに “追加で学習させよう” というのが「ファインチューニング」の考えです。少し前であればプログラムを駆使して学習させる必要がありましたが、現在の ChatGPT であればブラウザの画面から追加学習を行うことが可能です。ただし、どんなデータでも学習できるわけではなく、決まった形式にしか対応していません。
社内のWordやExcel、PDFなどのファイルや、データベースに保存されたデータなどを学習させたいのであれば、そのための「変換」が必要となります。追加学習のサービスは無料ではありませんので、データが多ければそれなりのコストが掛かります。さらに、すでに学習済みである膨大なデータに追加して自社データを学習するため、自社データをもとにした、事業者が期待するような回答が返ってくる確率はあまり高くないようです。
現時点では、一企業が試験的に行うにはコストと効果があまり釣り合わないので、 “業界団体として共通のモデルを作る” といった場面での利用が向いていると考えられます。