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物価高に苦しむ消費者は〝うま濃い余韻〟の味わいを求める傾向

2024.06.18

「食」を科学する株式会社味香り戦略研究所は、保有する12万件超の味覚データベースに加えて、2024年の食品・飲料の市場商品の味覚データを分析して、味のトレンドを調査。結果をグラフと図表にまとめて発表した。

本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。

時代を映す消費者心理と味覚

2020年から続いたコロナ禍は、2023年5月の5類感染症移行を区切りとして収束に向かったが、世界情勢の変化によりエネルギー資源を含む様々なものの価格が上昇し、食品・飲料では1年間で約3万品目が値上げされ、消費者は生活の見直しを迫られることとなった。

また、消極的にならざるを得ない消費行動の中で、不安を抱える消費者は安心感を求め、プラントベースフードや代替食品など新技術や目新しい新商品から、「よく知っているブランド」への回帰が見られた。

2024年の現在、消費者が直面している閉塞感は物価高によって消費行動の見直しを強いられる経済的な不自由感であり、日々買わざるをえない食品・飲料の価格上昇、容量の減少など商品仕様が変更されるステルス値上げなどからくるものなどが想定される。

そこで味において消費者が求める安心感を実現するため、メーカー各社は〝ほっとする味〟であるうま味を軸とした「うま濃い」味わいを強化。2024年上半期の味覚トレンドを形成していることがわかった。

[図1]味覚トレンドの変遷(イメージ)

消費者を満足させる「うま濃い」食品・飲料

2024年上半期 食品・飲料トレンドのキーワード

食品メーカーの商品開発やマーケティング支援などを行う味香り戦略研究所は、2004年の設立以来さまざまな食品の味を分析し、独自に味覚データベースを構築している。これにより、最新の味と過去の味のデータ比較を可能にした。

分析から、複数のカテゴリで日本人が好む味わいである「うま味」が強められている傾向がわかった。「うま味」は日本人が発見した味覚で、全体の味わいを下支えする役割を持ち、後味が残りやすい特性を持つことから、喫食後の満足感にも寄与する。

2024年の代表的な「うま濃い余韻ブランド」の3商品

特に「うま濃い」味のトレンドが顕著に表れたカテゴリは、家の内外を問わず常用される「緑茶飲料」、幅広い属性から愛される「即席麺(カップ)」、味の多様化で拡大を続ける「鍋つゆ」となった。

これら3カテゴリにおいて、「うま濃い」味わいの強化が特徴的なブランドを以下に解説する。

■緑茶飲料:全体で「うま味の余韻」強化、止渇性 vs お茶らしさの二極化に

従来、緑茶飲料についてうま味やその余韻が語られることは少なかったが、緑茶には強いうま味があり、苦味・渋みとあいまって味を構成している。

[図2]緑茶飲料のリニューアル前後の味バランスの変化

緑茶飲料市場ではPBやミネラルウォーターへのユーザー流出もあり、メーカー各社は危機感を募らせている。そんな中、2024年春にメーカー各社が一斉にスタンダード商品のリニューアルを発表した。

リニューアル後は総じてうま味の余韻が強くなり、消費者に対して余韻の満足感を提案していることが推察できる。中でも伊右衛門はうま味の余韻に加えて味の濃さも増強され、“味わう”設計としたことで価格に敏感な消費者に訴える高コスパな味は市場商品の空白地帯にポジションを形成。他ブランドの止渇性を高めた「ライトな味わい」と対照的に、お茶そのものの味を深めた「濃い」味わいの二極化となっている。

[図3]サントリー「伊右衛門」 2024年リニューアルによる味バランスの変化

伊右衛門のリニューアルでは、非常に大胆な味の変更がなされた。2023年商品と2024年商品の味データを比較すると、一見して味わいが強化されていることがわかる。特に変化が大きいのは味の濃さ(濃厚さ)とうま味の余韻であり、他商品との比較においても飛び抜けて強くなっている。

これにより、少量でも満足感が得られる「うま濃い余韻」のある味わいは、ゆったりと楽しむ“ほっと一息つく時間”を提供するのだろう。

■即席麺(カップ):うま味の余韻+コク・厚みで満足度アップ

従来から、即席麺(カップ)は特にうま味・塩味の強い商品が多い食品カテゴリである。しかし、塩味に関しては、食塩相当量の表示が義務づけられていることや健康志向の高まりから減塩も意識され、実際に塩分摂取量は減少傾向にある。

減塩をしながらおいしさを確保する目的に活用されているのが「うま味」であり、メーカー各社はうま味にも注目した商品づくりを行なっているものと考えられる。

[図4]即席麺(カップ)のリニューアル前後の味バランスの変化

即席麺(カップ)の市場商品について、リニューアル前後の味データを比較した。うま味の余韻に加えて、コク・厚みが増すことで喫食時の満足感が高められると考えられる。各社リニューアル前後の値を見てもわかる通り、うま味の余韻とコク・厚みが強まっており、先味としてのコクと余韻に残るうま味によって、より満足感の高い味バランスに変化している。

[図5]日清食品「日清麺職人」醤油 リニューアルによる味バランスの変化

中でもうま味の余韻が大きく強化された日清食品「日清麺職人」のリニューアル前後の味バランスをレーダーチャートに示した。うま味の余韻が大幅に強化され、さらにコク・厚みも強くなっている。塩味に頼った強いだけの味わいではなく、コク・厚みとうま味の余韻によって味わいの奥行きを演出し満足感を高める設計は、おいしさを追究する食品メーカーとしての技術が表れていると言えるだろう。

■鍋つゆ:リニューアルで「うま味の余韻」の存在感が大きく

鍋つゆは近年、味の多様化が進み、さらに1人分から量を選べる小分け商品は一人暮らしでも手に取りやすく、鍋以外のアレンジも積極的に提案されるなど、季節ものの人気商品から野菜をたっぷり食べられる通年のメニューへと変化してきた。

[図6]鍋つゆのリニューアル前後の味バランスの変化

各社のリニューアル商品の味について、うま味とうま味の余韻の変化を図に示した。図の上の方がうま味の余韻が強いエリアであり、リニューアルによってうま味の余韻が非常に強化されていることがわかる。

味の素「鍋キューブ」濃厚白湯はもともとうま味の余韻が強いバランスであったが、今回のリニューアルではさらに強化され、うま味とうま味の余韻の強さは群を抜いている。うま味が全体の味わいを支え、さらにしっかりと残る余韻によって商品名にもある濃厚さを打ち出しながらも、刺激の強すぎないほっと安心感のある味にまとまっていると考えられる。

調査結果まとめ

2024年上半期の味覚トレンドは、世界情勢の影響による物価高から消費者は安心感・満足感を求め、「うま濃い余韻」の味わいの人気が高まっている。味わいの骨格をなすうま味が強くなることで、全体の味がしっかりと支えられ、さらにうま味の余韻が強くなれば、満足感も高まると推察される。

「うま濃い余韻」味わいのトレンドは特に緑茶飲料、即席麺(カップ)、鍋つゆのカテゴリにおいて顕著だった。各社、直近の商品はうま味の余韻が増強され、より満足感の高い味わいへと変化している。

食品メーカーにとっても大きな困難である物価高の中で、消費者に対するベネフィットとして、食の本質である味によって満足感を提供したいという各社の努力が「うま濃い」味のトレンドに表れているのではないだろうか。

<味分析について>
「味を測る機械」味覚センサを用いて食品の味を分析し、その味わいを見える化している。味覚センサは人の舌をモデル化しており、「おいしさ」の重要な構成要素となる基本的な味覚(旨味、苦味、塩味、酸味、甘味、渋味)、先味・後味を数値化。人が感じる味覚を分析して、客観的に表現することが可能だ。

人が口に入れたときに感じる味わいが先味、飲み込んだ後も感じる味わいを後味として、13項目の味を測定している。

本レポートでは、「うま味の余韻」は後味、それ以外は先味の項目を採用している。各グラフの縦軸が後味である「うま味の余韻」、横軸が先味の項目だ。

関連情報
https://www.mikaku.jp/

構成/清水眞希

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