ダイヤモンド半導体
半導体関連のニュースで、「パワー半導体」という言葉を耳にする機会が増えている。パワー半導体とは、高電圧・高出力で使うことができ直流を交流に、交流を直流に高速で電力変換できるデバイスのこと。EVや家電など身近な製品にも活用されている。
その代表がSiC(シリコンカーバイト)を素材にしたデバイスで、シリコンに比べ、大電気性、高耐圧性、高速などの特性を備える。このSiCに続く次世代半導体として注目されるのが人工ダイヤモンドを素材に使った「ダイヤモンド半導体」だ。
ダイヤモンド半導体の研究開発を行なう早大発ベンチャー・Power Diamond Systems(PDS)代表の藤嶌辰也さんはその特徴を「高効率で、SiCよりも省エネ性が高く、小型・軽量化が可能であること」と語る。
「ダイヤモンド半導体を使ったインバーター(電気変換回路)が実現すれば、例えばドローンのような電動エアモビリティーシステム、高効率再生エネルギーシステム、宇宙衛星通信など様々な分野で活躍が期待できます」(藤嶌辰也さん)
現在はまだ研究段階。社会実装されるのは10~15年後だという。
PDSは早大の川原田教授の研究を基に独自の縦型トランジスタを開発し、ドレイン端子に流れる電流で世界最高値を記録したベンチャー。研究次第で早期実用化も夢ではない。
半導体の主な種類と特徴
シリコン(Si)半導体
代表的な半導体材料で、コンピューターチップ(CPUやメモリーなど)、ソーラーセルなどの製造に採用。
シリコンカーバイド(SiC)半導体
大電流、高耐性に優れ、高速動作が可能であるため、新幹線などの鉄道や電動車のインバーターなどに利用されている。
ダイヤモンド半導体
極めて高い熱伝導率、広いバンドギャップ、優れた耐圧性能を持つことが特徴。高温や高電力の環境下での使用に非常に適している。
ダイヤモンド半導体の活用法
【1】通信衛星
衛星からデータ通信する送信出力が劇的に速くなる。
【2】次世代モビリティー
電力損失が減り、電費改善や高速充電も期待される。
【3】高放射線環境
放射線量が高い環境にも強く、宇宙や原子力発電所などでの利用も想定される。
取材・文/安藤政弘