エナセラ
通信もセンシングも制御も、電気が必要。今、IoT機器の新たな電源として注目されているのが、日本ガイシが開発した超薄型・小型のリチウムイオン二次電池『エナセラ(EnerCera)』だ。二次電池とは、充電して繰り返し使える電池のこと。これまでのものとは、何が違うのか?
「従来のリチウムイオン電池では、電極に使用する活物質の結晶の向きがバラバラで、リチウムイオンの通り道が迷路のようでした。結晶の向きを揃えたセラミック板で、通り道を最短距離にすることで、高エネルギー密度、高耐熱、低抵抗、長寿命な電池を実現しました」。NV推進本部 バッテリーアプリケーション マネージャーの鈴木千織さんはこう説明する。
ICカードに内蔵できるほど小さく薄い『エナセラ』では、微小な電力を蓄えて一気に出力できる。太陽光パネルなどと組み合わせれば、メンテナンスフリーの電源供給が実現。すでに環境センサーや輸送中の温度管理用タグ、位置トラッカー、スマートカードなど「多くの採用実績がある」と鈴木さん。設計上、発熱のリスクが極めて低いため、健康家電やスマートインソールなど、ウエアラブルデバイスでの活用も広がっている。
高出力な新電池の恩恵で、IoTやウエアラブル機器はさらに小さく高機能に。身につける際の負担も少ないため、今後は医療機器などへの活用も期待される。
電極に結晶配向セラミックス板を使用し、高耐熱、大容量、高出力を実現!
薄さ0.45mmの『エナセラ パウチ』と、コイン型で高温に強い『エナセラ コイン』をラインアップ。セラミックスメーカーとして持っていた結晶の向きを揃える技術で、高効率かつ安全に使える電池を開発した。
じわじわと様々なデバイスやサービスに採用
プロスポーツ選手の体の動きをモニタリングする、スマートインソールなど、小さく高機能なデバイスに次々と採用されている。
取材・文/太田百合子 イラスト/川崎敏朗