Y3K
ファッションメディアやインフルエンサーが熱視線を向けるネクストトレンドをご存じだろうか。〝Y3K〟だ。先行するY2Kと似た響きを感じるだろうが、それもそのはず。Y3KはY2Kから派生したジャンルなのだ。
端的に言えば、Y2Kは1990年代後半〜2000年代初頭のファッションの引用である。パリス・ヒルトンなど当時台頭したセレブのスタイルを再解釈したもので、日本のギャル文化も範にとる。へそ出しに象徴される健康的な肌見せ、そこに厚底ブーツやカラフルな配色で盛った自立した強い女性像が改めて共感を得た形だ。
対してY3Kは3000年代をイメージした世界観を指す。3000年は便宜的な数字で、Y2Kを基本にクリア素材やネオンカラーといったSF的テクスチャーを加えたスタイルが特徴。このサイバーな世界観の成り立ちには、デジタルテクノロジーの進化が欠かせないという。ファッションやカルチャーの市場動向に詳しい伊藤忠ファッションシステムの中村ゆいさん、田嶋嶺子さんが話す。
「Y3Kが注目される背景には、コロナ禍があると見ています。パンデミックの不安から一時退避する手段として、メタバースやアバターを活用したゲームなど、テクノロジーの力でフィクションに没入するコンテンツが支持された。その中で、ファッションでも非日常感の高いサイバーなムードが盛り上がったのではないでしょうか」(中村さん)
K-POPはY3Kの日本における流行の起爆剤になるのだろうか?
「ガールズグループの影響は根強いですね。ただ、非現実的な世界を想起させるY3K的なコンセプトを掲げた第4世代組のデビューはひと区切り。現在は等身大に近い若者像を打ち出す第5世代が脚光を浴びています」(田嶋さん)
Y3K的なグループの筆頭であったaespaも、2023年にはメタバースコンセプトから離れた楽曲を発表した。
「Y3K的な要素は、モチーフなどを日常的に取り入れる形で続いていくと予測しています」(中村さん)
Y2K、Y3Kに共通する価値は〝映えること〟だった。ベーシックなファッションをまとうK-POP第5世代の台頭に2010年代から続く〝盛る〟トレンドの終焉を感じる。
Y3Kのフォロワーが続々登場
今年3月、Y3Kガールズユニット「MEMORI」がデビュー。© 株式会社ミューズエンタープライズ. All Rights Reserved.
スニーカーショップの「atmos pink」はZ世代に人気の「FILA」と協業し、Y3Kテイストのコラボスニーカーを発売した。日本でもY3Kのフォロワーが増えつつある。
Y3K人気の火付け役はaespa(エスパ)
aespaは、2020年にデビューしたK-POPのガールズグループ。仮想世界でメンバーの分身のアバターと交流しながら成長する〝メタバースアイドル〟という異色の世界観で注目に。© SM ENTERTAINMENT CO.,LTD. All Rights Reserved.
材・文/渡辺和博