久々に国産セダンの新型車が2社から発売された。方向性は異なるが、居住性、実用性、コネクティビティー、いずれもフラッグシップカーにふさわしいハイレベルな進化を遂げていた。その詳細をレポートしたい。
改めて見直したいセダンの価値と魅力
フラッグシップカーとは、一般的に自動車ブランドの頂点に立つクルマのことを指す。以前は乗用車の最高級モデルが多かったが、SUVやミニバンがファミリーカーの主役になるとフラッグシップカーをこちらにシフトするメーカーも現われるようになった。
こうした状況下で、トヨタは『クラウン』のセダンを2023年11月に発売した。「クロスオーバー」「SUV」と続いた新しい『クラウン』のシリーズ第3弾として投入。〝元来のクラウンの型であるセダンの誕生〟と謳い、トヨタはフラッグシップカーとして『クラウン』セダンを位置づけた。
一方、ホンダも今年3月に、乗用車の最上級モデルとして11代目となる新型『アコード』を発売。2021年に『レジェンド』の生産を中止してから〝RVメーカー〟と揶揄されてきたが、ようやくセダンの最上級車を投入した。
ちなみに、この2車のスタイリングはルーフからリアウインドウがなだらかな曲面が特徴的で、一見リアゲート付きの5ドアモデルに見えるが、両車とも独立したトランク部分を備えた3BOXセダンなのだ。ここで、3BOXセダンとSUVやミニバンのようなリアゲートを備えたクルマの違いを解説したい。
まずは遮音性から。3BOXセダンはトランク部分が室内と一体になっていないため、後輪のサスペンションやタイヤから伝わるノイズなど外部からの音が遮音されて室内に侵入してこない。一方、SUVやミニバンはリアゲートを開け閉めするたびに、車外の熱や冷気、排気ガスが侵入し室内と車外の空気が混ざるので、不快に感じることがある。ゲートの開口部があることで車体の剛性は低下するが、ウインドウが固定されているセダンは剛性面でも優れており、快適な乗り心地につながっている。
ハッチバック的なスタイリングだが、あえてトランクを独立させたのはフラッグシップカーにふさわしい上質なクルマに仕上げたいという狙いがある。しかし、フラッグシップセダンの存在は、世界的なトレンドを見ても希薄になっていることも事実。そんな中、日本を代表するメーカー2社から登場した意義は大きい。さらに実用性という意味でも、きちんとバージョンアップが施されている。この機会に改めて、セダンの価値や魅力を考えてみてはいかがだろう。
風格を備えた新しいフォーマルセダン
トヨタ『クラウン』
Specification
■全長×全幅×全高:5030×1890×1480mm
■ホイールベース:3000mm
■車両重量:2030kg
■排気量:2487cc
■エンジン形式:直列4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:185PS/6000rpm+180PS
■最大トルク:225Nm/4200〜5000rpm+300Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:18.0km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:730万円
※「セダン 2.5Lハイブリッド2WD」
重厚感とワイド感を強調したフロントノーズをメーカーは「ハンマーヘッド」と呼ぶ。グリルが低い位置にワイドに広がっており、トヨタのフラッグシップカーとしての存在感を示している。
オーソドックスなセダンは造りたくないというデザイナーの思いがサイドビューに表われている。フロントドアよりリアドアのほうが長いのは、リアシートを重視したセダンの証しでもある。
テールランプは左右につながるデザイン。全幅は『アコード』より30mm広いが、バンパーまでボディーと同色になっているので、ワイド感より背の高さ(全高も30mm高い)のほうが印象に残る。