「若い頃と比べると物覚えも悪くなったし、脳が衰えている気がする」という人もいるだろう。しかし、脳内科医の加藤俊徳先生はそれは間違いだと指摘する。先生の話から我々の脳の驚きの潜在能力が見えてきた!
脳内科医/医学博士
加藤俊徳さん
加藤プラチナクリニック院長。脳の学校代表。昭和大学客員教授。近著に『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』。
脳の黄金期!“正しい使い方”でフル活用
多くのミドル世代が直面する、物忘れや集中力の欠如といった現象。「年を取ったら脳が働かなくなるのも当たり前」だと諦めがちだが、これに対して「40代後半から50代は、脳の最盛期です」と語るのは、脳内科医の加藤俊徳先生だ。
「脳内には働きが異なる8つの部位があります。私はその8つに番地(番号)を付け、『脳番地R』と呼んでいますが、実は脳番地ごとに発達するタイミングが違います。例えば、30代の脳は記憶力を司る脳番地にある『超側頭野』が発達するため、行動するほどに知識が増えていきます。40代になると、理解力を司る脳番地にある『超頭頂野』がピークを迎え、柔軟性のある分析力が高まります。そして、50代は感情や思考力を司る脳番地にある『超前頭野』が活性化して実行力や判断力が備わります。以降も使い方によっては成長していきますが、脳科学的に見れば、様々な高度な能力が発達した45~55歳前後は、高い潜在能力を持つ脳の黄金世代だといえるのです」
年代別に脳の発達段階は変わる。その仕組みを理解し、使い方を変えることが活性化につながる。
だが、せっかく年齢とともに脳が発達していくとしても、正しく使わなければ、その機能は衰えてしまう。
「1週間寝込めば身体の筋肉が衰えるように、脳も使わなければ機能が劣化します。肝心なのは、特定の部位だけでなく、脳全体をきちんと使うこと。日々、同じような行動をしていると、特定の脳番地しか活性化せず、ほかの機能が衰えます。脳番地は連携して働くので、衰えた脳番地があると正しく機能せず、脳も疲れやすくなるし、モチベーションも感じづらくなります。逆に言えば、脳全体を上手に使い続けることが、脳を元気に動かし続ける秘訣です」
脳内のどんな能力が弱っているかは、日々の行動からも推測できるという。
「例えば、物忘れや記憶違いが多い人は、理解力が弱い可能性が高いです。20代以前は理解しなくても物事が記憶できましたが、30代以降は理解したうえでないと記憶が定着しません。だから、新しいことを覚える際は丸暗記ではなく、『理解したうえで覚える』と徹底すれば物忘れや記憶違いも減るはずです。このように、脳の使い方を意識するだけでも、悩みは解消できます」
そして、脳に疲労をため込まず、元気に働いてもらうために欠かせないのが、新しい刺激を受け続けることだ。
「脳はこれまで挑戦したことのない経験や感情によって発達します。また、年齢とともに脳が成長するので、これまで苦手だったことが得意になることも多々あります。例えば、幼少期は運動が苦手だった人が、年齢を重ねて脳が発達するにつれて、ミドル世代になって身体を動かすことが好きになる可能性も高い。私たちの脳は無限大の可能性を秘めています。ぜひ、いくつになっても新たな挑戦を重ね、脳に刺激を与えてください」
年齢にこだわらず、関心を突き詰める行為が、脳の疲労を取り除き、活性化させる一番の方法なのかもしれない。
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