第一三共ヘルスケアは全国20~60代男女を対象に「通勤時の熱中症対策に関する意識調査」を実施。回答結果をグラフと図表にまとめて発表した。
コロナ禍以降、リモートワークが可能な人の中では、出社と併用する“ハイブリッドワーク” が定着してきたが、今回の調査でコロナ禍の2020~2023年と比べ、約4割は出社頻度が増えていることが判明した。
また夏場の通勤時、屋内外の不快な寒暖差によって仕事の生産性が低下するという結果も明らかになったことから、今年は “暑熱順化”をしっかり行ない、体を暑さに慣らして上手に体温調節することが夏を乗り切るカギになりそうだ。
後半では国立環境研究所・岡和孝先生による解説「オフィスワーカーの熱中症対策について」も掲載しているので、調査結果と併せて参考にしていただきたい。
ハイブリッドワーカーの「出社頻度」に関する実態調査
コロナ禍以降、リモートワークが可能な人の中では、出社を併用する“ハイブリッドワーク”が定着してきたが、出社頻度を聞いたところ、約4割(42.5%)が、コロナ禍の2020年~2023年と比較して「増えた」「増えたような気がする」と回答した(図1)。
また、出社頻度が増えた人のうち約7割(72.1%)が、ストレスを感じるようになったと回答。在宅ワークを中心とした働き方が根付いていることが推察できる(図2)。
■夏場に感じる「寒暖差」と「熱中症」に関する意識調査
出社頻度が増えたと回答した人(図1)のうち、夏場の通勤時に屋内外を出入りすることで「寒暖差」を不快に感じた経験がある人に、パフォーマンスへの影響を聞いた。
すると4割以上(44.0%)が、仕事のパフォーマンスが60%未満に低下したと回答。寒暖差は仕事の場面で大きな影響を及ぼすことが考えられる(図3)。
続いて自分自身が熱中症になる危険性をどの程度感じているか聞いたところ、半数以上(54.4%)が「感じていない」と回答。一般的に熱中症への意識が低いことが推測できる(図4)。
通勤時に熱中症になった(またはなりそうになった)自覚がある人の主な症状は、最も多いのが「不快だと感じるほどの症状」 (44.1%) 、次いで 「集中力低下などの支障をきたす症状」(42.8%)となった。
比較的自覚しにくく、対策を怠ってしまうような症状レベルであることから、軽症であるとしても熱中症の一歩手前になるリスクがあることを自覚して、重症化させないための正しい対策を身につける必要がある(図5)。
■「夏場のライフスタイル」に関する実態調査
約7割(66.0%)が、夏場は他の季節と比べて「よく眠れない」と回答しており、熱中症対策にとって重要な睡眠を十分に取れていないことがわかった(図6)。
また、約4割(44.8%)が1か月のうち発汗を伴う運動を「行っていない」と回答。日頃から運動や身体のケアを十分に実行できずにいることが予想できる(図7)。
調査概要
調査名称および出典/第一三共ヘルスケア「通勤時の熱中症対策に関する意識調査」
実施時期/2024年5月7日(火)~8日(水)
調査対象/全国20~60代の男女632人(性年代別均等割付)
調査方法/インターネット調査
調査委託先/株式会社ジャストシステム
オフィスワーカーの熱中症対策について
国立研究開発法人国立環境研究所 気候変動適応センター
気候変動影響観測研究室 岡 和孝 先生
2023年は、世界的に観測史上最も暑い夏となりましたが、「地球沸騰化時代が到来した」といわれるほど、近年暑さは深刻な社会問題となっています。
そんな猛暑が続く中で増えているのが「熱中症」です。日本でも、熱中症における死者数は台風や地震などの自然災害による死者・行方不明者数をはるかに超えており、もはや熱中症は「熱による災害」といえます。
“夏は暑いのが当たり前”という考えが浸透しているがゆえに熱中症に対する意識が薄れてしまっていることが熱中症対策の難しいところです。
これまで、通勤時のような短時間の外出であればそこまで熱中症リスクは高くありませんでしたが、予想もできないような猛暑が襲う昨今、通勤時にも注意するに越したことはありません。
調査結果から、通勤時の熱中症症状として集中力の低下が挙げられていますが、本人も気づかないうちに「かくれ熱中症」になる可能性があるので注意しましょう。
今年の熱中症対策で重要なキーワードは、“暑熱順化”。近年、コロナ禍での外出機会減少やリモートワークの普及などに伴い、快適な屋内で過ごす時間が長くなったことから、体を暑さに慣らす“暑熱順化”が十分できていない人が多いのではないでしょうか。
暑さへの順応については個人差がありますが、数日から2週間程度かかるといわれています。具体的には、「1回30分間のウォーキング」を週に5日程度行うことや、「1回30分間の筋トレ・ストレッチ」を週に5日~毎日実践するといった方法が挙げられます。
運動以外では、「湯船にお湯をはって入浴を行う」ことも大切です。入浴頻度の目安は2日に1回程度。入浴の前後に十分な水分と適度な塩分を補給し、入浴して適度に汗をかくことをおすすめします。
ここで注意してほしいのが、暑熱順化は一度獲得したらずっと続くものではないということ。しばらく何もしなければ元に戻ってしまうので継続的に行い、梅雨などで気温が下がった後には、再度準備しておきましょう。
熱中症対策においては、暑い日々が当たり前になっている中で、意識的に対策を取っていくことが大切です。就寝前にコップ1杯の水を飲む習慣をつけることや、外出時には、
(1)UVカット率の高い黒い日傘をさすこと、
(2)服装の素材や色を工夫すること、
(3)猛暑日や日差しが強い時間帯はそもそも外出を控えること
を心掛けるとよいでしょう。
一方で、熱中症対策においては、個々人に任せるだけでは限界があるため、地域や会社などのコミュニティで、熱中症に対する積極的な取り組みを行うことが重要だと考えています。
関連情報
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/
構成/清水眞希