米国人のスピーチやプレゼンは本当に上手い。ちょっとしたパーティでのスピーチから、企画会議のプレゼンまで、人前に立って話すスキルを身に着けている人が多い。
コミュニケーションコーチでTEDxスピーチトレーナー兼エグゼクティブメディアトレーナーの小林音子さんによると、米国人は中高生でスピーチやネゴシエーションを授業で重要視し、どうやって話せば自分の言いたいことが伝わるのかを、訓練しているらしい。
米国の中高生の授業の内容を知って実践すれば、私達も話し方が上手くなるかも。今回は小林さんに、米国の中高生が学んでいる話し方の授業について、教えてもらう。
話し方を学ばずに社会に出る日本人ビジネスパーソン
私が知っている米国人の多くは、自分の意見を堂々と言えて、初対面でもすぐに打ち解けられる人が多い。トークで人を動かす力があり、多くの人の前でも臆することなく、人々を魅了するスピーチができる。「名プレゼン」と言われてすぐに思いつくのも、ほとんどが米国人である。
これは単に「国民性」の違いなのだろうか。小林さんによると、国民性に関係なく、米国では、学生時代から「話し方」を体系的に学んでいるからだと言う。このほど「アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業」(SBクリエイティブ発刊、定価1650円)で、その内容を紹介している。
米国の中高生はコミュニケーションのスクールに通い、「社会に出てから最も大切なスキルである話し方」を“社会に出る前に”学んでいるから、ビジネスの場でトークが上手いのだ、というのが小林さんの分析である。
確かに私達日本人は小学校から大学まで、話し方やコミュニケーションに関する授業を受けたことが無い。生きていく上でかなり重要なコミュニケーションの方法や、話し方を学ぶ機会がほとんどないまま、社会人生活が始まってしまうのである。社会人のスタート時点で、すでに米国人とは差があるのだ。
米国の中高生の話し方で大事なのは「マインド」
小林さんによると、米国の中高生が学んでいる話し方で最も重要なのは「マインド」だと言う。このマインドとは話をする時に頭の中でどんなことを考えているか、どんなことを思っているかということで、こうした心の持ちようが話し方に大きく影響すると言う。
言葉だけいくら丁寧に言っていても、マインドが無ければどこか感じが悪い印象を相手に与えてしまう。小林さんによると、敬語を駆使したり、コミュニケーションのスキルを身に付けても、マインドが伴わなければ相手に不快感を与えてしまい、心を開いてくれないと言う。話し方における「マインド」がコミュニケーションの本質だと、アメリカ人中高生は学ぶのである。
そういえば、学生時代に口の悪い教授がいて、女子学生に文句ばかり言っていたが、なぜか好かれていた。また、厳しいしつけと注意の言葉で有名な保育園の園長が、誰よりも子供たちに好かれていたのも、マインドがあったからだろう。正しいマインドがあれば、コミュニケーションの相手は必ずそれを感じ取って、好意的に受け取ってくれるのである。
小林さんによるとコミュニケーションの9割はこのマインドで決まると主張して、正しいマインドを身に着ければ、ビジネスの交渉は成功し、部下との関係も改善するだろうと考えている。
例えば米国の中高生が学ぶ正しいマインドに基づいた1)日常会話、2)説明、3)プレゼンテーションやスピーチ、の3つを簡単に解説してみよう。
1)日常会話
目的:親しくなる
正しいマインドは受け入れること
2)説明
目的:わかりやすさ
正しいマインドは相手が理解することがゴールであるという気持ちをもつ。そのために、どこまで理解しているかオープンクエスチョンで質問すること
相手に説明の内容が正しいことを印象付けるために、自信をもつこと
3)プレゼンテーションやスピーチ
目的:心を動かす、行動を変える
正しいマインドは話し手が強い自信をもって伝えることで、相手に影響を与えること。ゼスチャーなどの非言語表現は大きめにすること
さらに「マインド」を重要視すると同時に、「言語表現」と「非言語表現」も大事である。米国の中高生は「マインド」「言語表現」「非言語表現」の3つがコミュニケーションの重要な柱であると学ぶのである。
言語表現とは主にあいづちの言葉のこと、非言語表現は言葉以外の視覚や聴覚に訴える表現である。視覚は表情やジェスチャー、しぐさなど。聴覚とは声の質や大きさなどで、言葉以外に伝わってくるものが、コミュニケーションに大きく影響を与えるのである。