モディ首相の改革
2014年に政権を握ったナレンドラ・モディ首相は、インド経済の変革を目指し、多くの野心的な改革を次々と打ち出しました。その取り組みは、従来の行政システムを刷新し、グローバル投資家の目を引きつけるための土壌を整えることに重点を置いています。
下記がモディ首相が実施した改革です。
【行政改革と直接投資の規制緩和】
モディ政権は官僚的な障壁を取り除くための行政改革を実施し、海外からの直接投資(FDI)に対する規制を大幅に緩和しました。この一連の改革により、ビジネスのしやすさが飛躍的に向上し、インドは新たな投資先としての地位を確立しました。たとえば事業設立の手続きが簡素化され、税制の透明性が高まったことで、多くの外国企業がインド市場への参入を決断するようになりました。
【計画委員会の廃止と新たな成長戦略】
従来の経済計画を担当していた計画委員会は廃止され、より柔軟かつ現実的な経済運営が可能となる新たな仕組みが導入されました。これによりインドはグローバルな経済動向に迅速に対応できるようになり、国際競争力を高めるための政策を積極的に展開しています。
【グローバル企業の進出とインド経済の躍進】
一連の改革の成果として、数多くのグローバル企業がインド市場に進出しています。
アップル、マイクロソフト、グーグルなどのIT企業をはじめ、自動車、製造業、金融など、多岐にわたる業種での投資が進んでいます。これによりインド経済は急速な成長を遂げ、新たな雇用機会が創出されるとともに、国内産業の競争力も大きく向上しています。
インドの製造業革命 メイク・イン・インディアと実利外交主義
【メイク・イン・インディア】
インド政府が掲げる「メイク・イン・インディア」政策は、同国の製造業を次のレベルへと引き上げるための野心的なプロジェクトです。2020年に導入された生産連動型優遇策(PLI)は、海外企業を誘致し、国内生産を強化するための重要な手段となっています。
このPLIスキームは、インド国内で製造された製品の売上増加に対し、4~6%の補助金を提供する仕組みです。このインセンティブにより、自動車業界をはじめとする多岐にわたる産業での生産拡大が期待されています。スズキ、フォード、タタ・モーターズなどの主要企業が既にこのプログラムに参加しており、インドは工業大国への道を着実に歩んでいます。
【実利主義外交】
インドはその独自の実利主義外交を展開し、世界の多極化する経済環境で巧妙なバランスを保っています。防衛装備の約60%をロシアから輸入しながら、米国や欧州とも深い経済関係を築いています。この戦略は、インドが一国に依存せず、多様なパートナーと協力するための重要な要素となっています。
インドはまた「グローバルサウス」の盟主でありながら、日米豪印で構成される「クアッド」や、中国、ロシア、イランなどが参加する「上海協力機構」にも加盟しています。この多方面にわたる外交関係は、インドの経済成長を強力に支えるだけでなく、国際的な影響力を拡大するための基盤を提供しています。
インドへの投資機会
インド経済の成長は、投資家にとって極めて魅力的な機会を提供しています。新NISA制度の導入により、インドへの投資がさらに身近なものとなり、多様な投資戦略が可能になります。
以下では、インドへの投資機会について詳しく解説します。
【新NISAの投資機会】
2024年からスタートする新NISA制度は、日本の個人投資家にとってインド市場へのアクセスを大きく広げるものです。現在、「つみたてNISA」を通じてインドに投資できる「iTrustインド株式」は、信託報酬が1%未満に引き下げられ、投資家から高い評価を得ています。このようなインデックスファンドを通じて、個人投資家は手軽にインド市場に投資することができます。
【投資の魅力】
インドの経済成長率は高く、人口ボーナス期や内需市場の活況、製造業の振興、実利主義に基づく外交政策など、多くの要素がその成長を支えています。そのため、インド市場はリスクヘッジと高リターンを追求するため、ポートフォリオへの組み入れ検討の価値があるといえるでしょう。
おわりに インドは新たなフロンティア
インド経済は、そのダイナミックな成長要因から、長期的な展望においても非常に明るい未来を描いています。急速な人口増加に伴う消費市場の拡大、積極的なインフラ整備の進展、そして製造業の飛躍的な成長が、その基盤を強固にしています。これらの要素は、投資家にとって安定したリターンを期待できる市場環境を提供します。
さらにインドの実利主義外交は、同国の経済的安定性を一層高めています。多方面にわたる国際関係を強化することで、インドはグローバルな経済環境の中で重要なプレイヤーとしての地位を確立しています。こうした戦略的なアプローチは、インド経済の持続的な成長を支える重要な要素となっています。
こうした理由から、インドは世界経済の新たな潮流として、今後ますますその力を発揮することになるでしょう。投資家にとって、インド市場は新たなフロンティアであると考えられます。
文/鈴木林太郎