卵と麺、そして少量のしょうゆのみで食べる「たまごかけ麺(TKM)」が昨今人気を集めている。チェーン店を中心に新メニューとして提供する店舗が増えているだけでなく、専門店や冷食まで登場しており、一過性のブームにとどまらない勢いだ。2023年10月に東京都にオープンしたTKM専門店に、人気の背景を聞いた。
チェーン系店舗が参入、チルド商品も
ごはんの上に生卵を載せ、しょうゆを少したらしてかき混ぜて食べる「TKG」ことたまごかけご飯。その麺バージョンといえる「たまごかけ麺(TKM)」が昨今人気を集めている。その起源といわれているのが、埼玉県熊谷市にある「ゴールデンタイガー」だ。2018年のオープン当初から看板メニューとして高い人気を集め続けている。
その人気が他店舗にも波及し始めたのは2023年の後半ごろ。23年10月に東京都千代田区神保町にTKM専門店「麺屋二二一(ふじい)」がオープンし、11月にはエムピーキッチンが運営するつけ麺専門店の「三田製麺所」で『たまごかけ麺』の提供を始めている。そして24年3月、東洋水産からチルド麺の商品『マルちゃん まぜら~ 卵かけ麺 2人前』が販売された。
開発の際、ゴールデンタイガーの味を参考にしたという。ゆで時間を調整することで、冷たくしても温かくしても食べられるのが特徴だ。
シンプルな味わいが女性からも人気に
麺屋二二一では1日に150~200食ほど売れるが、店主によると、そのうち女性が3~4割を占めるという。
「卵の香りをダイレクトに味わえる上、味付けもシンプル。見た目の良さにもこだわっているので、女性が好む要素を多く備えているように感じます」
席数は8席に絞っており、その分提供する器などの質にこだわった。女性が入りやすいようにトイレは広く、内装も清潔感のあるものになっている。
店主は前職のラーメン屋を退職後、現在も手掛けているラーメンコンサルタントの仕事を始めた。ちょうどその頃、TKMの話題が業界内でも広がってきていたそうだ。
「2年ほど前でしょうか。全国の色々なラーメン店でサイドメニューや期間限定メニューとして提供されはじめていました。試作したところ思ったより美味しく、売れると確信して出店を決意しました」
トッピングの味付けは濃い目にしており、シンプルな味わいの麺を引き立たせている。麺を食べた後は、残った卵とたれにご飯を入れてTKGとして食べられる。
ブームの背景について、はっきりとした要因はわからないものの、麺料理の文化は多様化しており、受け入れられる土壌はできていたと店主は分析する。
「油そばや台湾まぜそばなど、まぜそばというジャンルだけでも幅広く進化してきています。その中で、すでに卵を使った定番料理ともいえるTKGの麺バージョンといえば、味のイメージも想像しやすい。まさに、ありそうでなかった新しいジャンルではないでしょうか」
今後ブームが予想されるTKM。さっぱりとした味わいは、これから訪れるであろう厳しい暑さにぴったりだ。見かけたら試してみてはどうだろうか。
取材・文/桑元康平(すいのこ)