カプサロンはどこで食べられる?
スナックバーのカウンター。他にもトルコピザやハンバーガーなども。
さて、このカプサロン。現在ではロッテルダムだけではなく、オランダ全土で食べることができる。スナックバーと呼ばれる軽食屋がどの街にもあるが、大きくオランダ系とトルコ系に分けられる。トルコ系のスナックバーにはほぼ間違いなくカプサロンがあるといっていいだろう。一方、レストランやスーパーではお目にかかれないのでご注意を。スナックバーは店内で食べることもできるが一般的に座席は少なめ。持ち帰ったり、その辺のベンチで食べたりというのが多い。ちなみにGoogleマップで「Kapsalon」を検索すると、当然のように床屋や美容院ばかり出てきてしまうので「kapsalon, snack」で検索するといいだろう。
スナックバーのメニューは、写真付きの場合も多い。
今回私はショッピングモールの中にあるスナックバーに行った。まずは大・小のサイズを選ぶ。日本人女性の私なら小で十分満足できるボリュームだ。続いて肉の種類を選ぶ。チキンやラム、ビーフの他、ベジタリアン向けのファラフェルというひよこ豆のコロッケがあることも多い。最後にニンニクソースとサンバルの有無を聞かれる。両方かけるのがおすすめだが、サンバルは結構辛いので少なめにしてもらうのもいいだろう。持ち帰りかどうかに答え支払いを済ませたら、あとは出来上がりを待つだけ。混んでなければ5分ほどで完成だ。お値段は発祥の地であるロッテルダムのスナックバー「El Aviva」では小が9ユーロ(約1500円。2024年6月現在)、大が11ユーロ。私が購入した店は小が8ユーロ、大が9.5ユーロだった。オランダは外食が高いが、カプサロンなら10ユーロくらいでおなかいっぱい食べられる。
これは大。縦12㎝、横20㎝ほどだった。
金額的にはファストフードのセットメニューも同じくらいなのだが、たっぷりの野菜はカプサロンならではの魅力。レタス、オニオン、パプリカ、きゅうり、トマトなど、色も種類も豊富な野菜がこんもりとのせられる。この店では人参の千切りや紫キャベツのみじん切りもあり、鮮やかな彩りが食欲をそそる。さらにスライスオニオンは「スマック」という中東のスパイスで和えてあった。スマックはスマック・シバーガインというウルシ科の植物の実を乾燥させて砕いたもので、赤しそふりかけの「ゆかり」に味も見た目も似ている。
カラフルな野菜たち。増減など好みを聞いてくれることも。
そんなわけで、ハイカロリーで背徳的ながら野菜も食べられるのがカプサロン。野菜が不足しがちになる旅行中にもぜひお勧めしたい。
オランダは近隣諸国に比べ名物料理に乏しく、また手の込んだ独自の調理法というのも少ない。料理本を見ていてもワンプレート料理が多く、食事を皿一枚で済ませてしまうところに、合理的とも言われる国民性を感じていた。しかしそれがさらに合理的な「一つの箱に詰めてしまう」料理になったとたん、それぞれの素材の合わせ技で、こんなうまいものが出来上がってしまうとは・・・と驚かざるとえない。
まあとにかく。オランダに来ておなかが空いたときに、床屋じゃない方の「Kapsalon」の看板を見かけたら間違いなく優勝。安心してがっついてください。
世界は「うまい」で満ちている。
文・写真/福成海央
オランダ在住、ミュージアム好きの科学コミュニケーター。気になったらとりあえずなんでも調べるし、なんでも書く。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員