新NISAでの投資は、適当に考えるのではなく、資産形成の原理原則に従ってこそ成功にたどり着ける。その具体的な勝ち筋を探し求め、制度を〝作った〟金融庁の幹部と実践派ファイナンシャル・プランナーに取材した。
新NISAでの資産形成に裏切られないための考え方
【1】制度の内容をしっかり理解
つみたて投資枠と成長投資枠の2つがあるが、購入できる投資商品の違いによる。また、つみたて投資枠の対象で、積み立てに有利なインデックスファンドは、成長投資枠の枠も併せて使える。まずは新制度になり非課税の枠が大きくなった。と理解するのが重要だ。
【2】お金は必ず〝色分け〟管理特に共働き世帯は気を引き締めて
毎月の給与からの積み立ては、投資分を別の銀行口座でもらうなどの色分けが重要だ。特に、「共働き世帯は、余裕を感じる反動で『使途不明金』の無駄が増える傾向に。例えば夫の給与は生活費、妻の給与は投資というふうに、きちんと夫婦で話し合い、正確に色分けしましょう」(篠原さん)。万が一に備えた貯金は大切だが、そちらもできれば別口座で管理するなどして”投資原資”を確保することが重要になってくる。
投資に使うお金を少しでも増やす工夫として色分け管理が重要で、貯金より投資に回すと◎
【3】証券会社選びは自分が使いやすいと思うところを選ぼう
基本は、残高がいつでもリアルタイムで確認できて手数料が安く取扱商品が多いネット証券が第一の選択肢となる。窓口は電話やメールが主体だが、これらの担当者も知識が豊富なので心配ない。
積立銘柄が多いのはネット証券。サポートも充実
【4】投資の知識を得るには証券会社や〝J-FLEC〟のコンテンツを活用
新NISAでの口座開設や取引が活況だ。「投資詐欺の相談が増えています。投資の相談は、信頼できる証券会社にするようにしてください」(高田さん)という。初心者に甘い言葉をかけて近づく無名な投資会社や投資家の話を聞かないようにしたい。「またJ-FLECという国民の金融リテラシーを高める機関が発足しました。今後、様々なお金に関する教育コンテンツが拡充予定です」(同)とのこと。投資と両輪で知識も蓄えたい。
投資詐欺情報への注意はもちろん自分の金融リテラシーアップも目指そう
「何を買う」よりも先に考えるべきこととは?
新NISA制度が始まってはや4か月がたち、それによる投資マネーの流入成果が目立つ。日本証券業協会の調査結果では、2024年1〜3月期での投資額は前年同期比約3倍と、まるで投資バブルが訪れたようだ。
これをチャンスと投資を始める人は「どの金融商品に投資しようか」と考えがちだが、今回取材した2人のプロたちの考えは異なる。新NISA制度そのものを司る金融庁の高田英樹さん(総合政策課長)は、「まずはご自身のライフプランを考えるところから始めましょう」と、人生の中でいつどのくらいのお金が必要になるかを認識する重要性を説く。
また、積立投資を20年以上愚直に行なってきた実践派FPの篠原充彦さんは、「暴落が起きても気持ちが病まないように、初心者は世界全体に目を向けた金融商品1択でよい」と助言する。新NISAの精鋭とも言うべき2人が語る心得を詳しく見てみよう。
〈篠原充彦さんの教え〉
まずは「つみたて投資枠」1択で愚直に資産を積み立てていこう
枠の再利用ができる新NISA制度を、篠原さんは「1800万円まで自由に出し入れできる賞味期限の来ない冷蔵庫だ」という。「この〝冷蔵庫〟に、毎月の給料から一定の金額を積み立てます。最初は増える実感が少ないですが10年ほどたつと、複利の効果も相まって、資産が増えたと実感できますよ。また、お金が必要な時は適量を取り出して使いましょう」と、自身が20年来積立投資を実践した経験による助言は説得力がある。
篠原FP事務所 代表
一級FP技能士
篠原充彦さん
吉本興業の元芸人という異色の経歴を持ち、各メディアで活躍中のFP。笑いとお金が融合したマネーセミナーはわかりやすくておもしろいと好評。
篠原さんが考える新NISA活用の心得
【1】一喜一憂せず投資を続ける状態に
世界経済は右肩上がりでそれに比例して株価も上がっていくものだが、「先行きは誰にもわかりません。2020年のコロナ禍の暴落は誰が予想できたでしょうか。またその暴落で一喜一憂していては、精神的にしんどくなっていき、投資から逃げ出しては元も子もありません。その不安に負けないように、長期での積立投資でコツコツ増やす気持ちを忘れずに!」(篠原さん)
【2】国際分散×時間分散で〝お金の量〟を味方に
毎月決まった額の積み立ては、リスクを時間で分散でき、資産形成に失敗する確率が下がる。「暴落時は買える商品の量が多くなります。『バーゲンセール』気分でたくさん買えたと思うのが肝心です。さらに世界全体に投資してリスクを分散すれば盤石です。国ごとの商品に分散せず、初心者は、全世界の株式が8000種類以上入る『全世界インデックス』の積み立てをおすすめします」(篠原さん)
【3】〝成長〟投資枠の言葉に惑わされてはいけない
「新NISAでの成長投資枠は、旧NISAを継承するための枠と言って過言ではありません。『成長』と銘打ちますが、日本株や外国株の投資は、本当に成長するかどうかはわかりません。また、初心者がいきなり個別株に投資するのはリスクが高すぎますし、全世界インデックスファンドの購入にも成長投資枠が使えるので、積立投資でコツコツ購入していきましょう」(篠原さん)