ウェザーニューズから、今シーズンの台風発生数は23個前後と、平年の25.1個よりやや少ない傾向と予想する2024年の「台風傾向」が発表された。
夏の前半は主な台風発生域の対流活動が平年より不活発なものの、夏の後半か秋には、ラニーニャ現象が発生。次第に対流活動が活発になるという。
ラニーニャ現象発生時には、日本の南の比較的近い所で台風が発生する傾向があるため、台風が発生してから日本への接近までの時間が短くなる可能性がある。
そんな2024年「台風傾向」の概要を同社リリースを元にお伝えする。
台風発生数は平年よりやや少ない予想。次第にラニーニャ現象が活発化
■台風の発生数について
2024年の台風発生数は、5月までに発生した2個を含めて23個前後の予想だ(※1)。
※1 台風発生数の予想には、ロンドン大学(TSR)及び類似年の傾向を参考にしています。
春までエルニーニョ現象が発生していた影響で、インド洋全体の海面水温が平年より高い状態が継続する。また、夏の後半か秋にはラニーニャ現象が発生する見込み。
この影響で、夏の前半は主な台風発生域の対流活動が平年より不活発で、後半以降は次第に活発になり、年間の台風の発生数は平年の25.1個よりやや少なくなりそうだ。
図1 6〜8月のインド洋から太平洋の対流活動の模式図
シーズン前半(6〜8月)は<図1>、インド洋の海面水温全体が平年より高く、対流活動が活発になるため、上昇気流が卓越する(1)。
夏前半は南シナ海やフィリピンの東海上付近では下降流が卓越し、対流活動が不活発になるが、夏後半は南シナ海を中心に対流活動が活発になる(2)。
さらに8月頃にラニーニャ現象が発生すると、次第にフィリピンの東海上も対流活動が活発化する(3) 。
図2 9〜11月のインド洋から太平洋の対流活動の模式図
シーズン後半(9〜11月)は<図2>、インド洋の海面水温が平年より高い状態が継続するが、前半に比べ下がる傾向。このため、対流活動もやや弱まり、上昇流も弱まる(4)。
一方、ラニーニャ現象が強まると(5)、南シナ海からフィリピンの東海上にかけて海面水温が平年より高くなるため、対流活動が活発化する見込みだ(6 )。
■台風の発生位置について
図3 台風の発生位置の傾向
今シーズンは「ラニーニャ現象」が発生する見込み。近年の研究(※2)によると、ラニーニャ現象が発生した年の台風の発生位置は、東経150度より東の熱帯域で少なくなり、日本の南海上で平年より多くなる傾向があることが示されている(図3)。
※2 参考文献:Song, J., P. J. Klotzbach, and Y. Duan, 2020: Differences in Western North Pacific Tropical Cyclone Activity among Three El Niño Phases. J. Climate, 33, 7983–8002,
■台風の進路傾向について
図4 台風の進路の傾向
同じ研究で、ラニーニャ現象が発生した年の台風の進路は、フィリピンの東から日本の東海上へ進む台風は少ない傾向が示されている(図4)。
■類似年の台風発生数
1951年以降、エルニーニョ監視海域(NOAA/米海洋大気局)の予想海面水温とインド洋の予想海面水温が、今年の予測と類似している年は、4例(2020、2016、2010、1998年)ある。
各年の台風発生数は14~26個、平均すると19.8個で、類似年の台風発生数は平年より少ない状況だ。
<類似年と今年の台風発生数(月別・年間)>
関連情報
https://weathernews.jp/s/news/typh/
構成/清水眞希